医学・医療最前線

先進医療の「インプラント」はどこが違う? ( 2009/11/20 )

 歯の治療として注目を集めている「インプラント」。先進医療の中にも「インプラント義歯」という治療法がありますが、これは一般的に病院や歯科医院で行われている通常の「インプラント」とは、どのように違うのでしょうか?

「インプラント」はチタンの土台に人工の歯を固定

 現在、何らかの理由で歯が根っこからなくなってしまった場合の一般的な治療法は3つあります。それは「ブリッジ」「取り外しができる入れ歯」、そして「インプラント」です(図参照)。ブリッジは、なくなった歯の両側の歯の一部を削って支柱とし、人工の歯をしっかりと固定する方法。入れ歯は、人工の歯に金属の留め金などがついた器具で、それを残っている歯にかけることで固定します。一般的な材料を使う場合、両治療とも公的な保険の対象となるので、患者の自己負担が比較的少なくてすむのが特徴です。

 これに対してインプラントは、1950年代にスウェーデンで開発され、日本では90年ごろから普及し始めた比較的新しい治療です。インプラント(implant)とは「体に埋め込むもの」という意味で、歯科の治療に使われるものだけを指す名称ではありません。歯科のインプラントの場合は、あごの骨に穴を開けて、「人工歯根」と呼ばれるチタン製のインプラントを埋め込み、それがしっかり骨と結合した後に、人工歯根の土台に人工の歯を固定します。(図参照)

 インプラントの長所は、入れ歯に比べ、ものをかんだときの違和感が少なく、かむ力も自然の歯により近いこと。あごの骨にかむ力が直接伝わるので、骨が加齢によって徐々に減っていくこともある程度防げます。また、ブリッジのように健康な歯を削ったり、入れ歯のようにがたついたりもしません。「見た目が自然」という審美的な面も優れています。

 一方短所は、歯肉や骨を切開して埋め込むという外科手術を伴うので、ブリッジや入れ歯に比べると患者の身体的な負担は大きくなり、治療には通常数カ月〜1年程度かかります。公的な保険が適用されない保険外(自費)診療となり、治療費はインプラント1本当たり数十万円程度と高額になります。

3つの治療法の比較(欠損が1本の場合)
3つの治療法の比較 インプラント治療の手順
インプラント治療の手順

先進医療のインプラントは、治療の前提に違い

 先進医療で承認されている「インプラント義歯」も、治療自体や使われる材料など、基本的には一般のインプラント治療と同じです。一般的に「義歯」とは「入れ歯」のことを指すケースが多いのですが、先進医療での「インプラント義歯」の「義歯」は、インプラント治療によるものも含めた広い意味の「人工の歯」を指しています。インプラント義歯には、インプラントを支柱にして総入れ歯を固定させるケースもあるので混乱しやすいのですが、通常のインプラント同様、1〜数本だけの治療もあります。

 それでは先進医療のインプラント義歯は、通常のインプラントとなにが違うのでしょうか? 厚生労働省によるインプラント義歯の適応症で、どういうケースで先進医療としてのインプラントが認められるかが決められています。それを分かりやすい言葉で説明すると「あごの骨が著しく減ったり、けがをしたりして歯がなくなったケース、あるいはがんの手術によってあごの骨の一部や歯がなくなったケースで、従来の入れ歯などでは、かむ機能の回復が難しい場合」となります。

 インプラント義歯の治療を手がける、慶應義塾大学医学部歯科・口腔外科の河奈裕正・診療副部長は「一般的なインプラントは『ブリッジや入れ歯でも対応可能。でもよりよい機能や見た目を求めて選択する』というケースも多いと思います。これに対して先進医療と認められるのは、そもそもブリッジや入れ歯という処置ができなかったり、これらではかむ機能が回復できないケースに限られます」と話します。

 また多くの承認施設では、インプラント義歯の適応ケースに「先天性」、つまり「生まれつき」に、あごの骨や歯の障害などがあるケースも定めています。「生まれつき」「けが」「がんの手術」といったケースは、“本人の責任とは言えない”原因によるもので、「虫歯」「歯周病」などのように、本人の不摂生などによるケースとは、一線を画すものでもあります。

通常のインプラントは、一連の治療もすべて患者負担に

 「どういうケースで先進医療として認められるか」という以外、先進医療のインプラントと通常のインプラントには、大きな差がないのでしょうか? このコラムの第1回目「先進医療」で詳しく述べたように、先進医療は通常医療の部分が保険対象となる“例外的な混合診療”なので、インプラント義歯でも、先進部分のインプラント治療に関連した、診断、検査、投薬など「通常医療」には保険が適用されます。

 これに対して通常のインプラントは、インプラント治療の部分が保険外診療なので、これに伴う診断、検査、投薬など、本来は保険診療となる部分までも患者の自己負担となってしまいます。このため費用は高額になり、治療を実施する施設によるバラツキも大きくなります。

 近年ではインプラント治療の進化に伴い、「X線CTを使った3次元画像診断」や「骨の移植・再生手術」など、高度な検査・治療が必要となるケースが増えており、これらに保険が適用されるかどうかは、全体的な費用を大きく左右する要素となります。

 通常の場合でも高い技術が必要となるインプラントですが、先進医療のインプラント義歯の場合は、患者のあごの骨や歯の状態が悪いことを前提とした治療となるので、当然通常のもの以上に医師の高い技能が必要となることも重要な点です。

 河奈氏は「先進医療であるかどうかにかかわらず、満足がいくインプラント治療を受けるためには、この治療全体の成績や、治療を受けようとする施設の実績などを検討し、十分なインフォームド・コンセントを経た後に実施することが大切」と指摘しています。

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