医学・医療最前線

乳がんのラジオ波熱焼灼術(はねつしょうしゃくじゅつ) で早期がんを治す( 2015/9/25 )

 早期の小さな乳がんで、できる限り患者さんに負担をかけないことを目的に発明された治療にラジオ波熱焼灼療法(RFA)があります。現在、全国8つの病院で試験的な治療が進められていますが、RFAを受けるためには厳しい条件があります。メリット、デメリットを十分に理解してから受けることが大切です。
 乳がんの年齢調整罹患率は人口10万人あたり82.2人(国立がん研究センター2011年、MCIJ2011報告)。女性の大腸がんは38.3人、子宮がんは32.7人、胃がんは29.5人と女性のがんの罹患率では乳がんがダントツの1位のがんです。
 実数にすると、約72,500例が闘病していることになりますが、死亡数は女性で13,000例。つまり、数こそ多い乳がんですが、一方でがんの中で治癒する確率も高いがんです。最近は再発後の治療法も進歩して再発しても長い期間にわたって普通の生活が送れるようにもなってきました。

ポイント

① マンモグラフィ健診の普及で非常に早期の段階で発見される乳がんが増えてきました。
② 早期乳がんに対しては、出来るだけ患者の負担が軽い治療法としてラジオ波熱焼灼療法(RFA)が注目されています。
③ 有効性、安全性の検証のために現在、国内8施設が参加した臨床研究が慎重に進められています。

早期乳がんが増えているからこそ注目

 発見の決め手はしこりの発見とマンモグラフィ検査です。特にここ数年はマンモグラフィ検査を中心とした健康診断で、比較的早期の小さいサイズのうちに発見されるケースが増えてきました。その結果、このような微小な乳がんをどのように治療すべきかが乳がん医療の世界の大きなテーマになっています。


写真1 今回お話を伺った国立がん研究センター中央病院乳腺外科長 木下貴之先生。

 早期乳がんの場合は、できるかぎり切除する範囲を狭く、あるいは切除しないで済む方法が検討されています。今回、取り上げるラジオ波熱焼灼療法(RFA)は現在、研究が進む早期乳がんの治療法の1つです。まだ研究段階ですので、公的医療保険の償還の対象ではなく、日本全国の8つの病院に限定され、「先進医療B」の制度の下で行われています。
 この研究はRAFAELO試験という名前が付いていますが、各病院間で統一した手順で進められています。RAFAELO試験の研究代表者を務める国立がん研究センター中央病院(東京都中央区)乳腺外科の木下貴之先生(写真1)のお話をもとに説明します。

加熱した針で小さながんを死滅させる

 RFAの原理そのものはとても単純です。乳房の外からがん組織に刺入した電磁針(ニードル)にAMラジオと同じ周波数の電磁波(ラジオ波)を発生させて加熱し、その熱で腫瘍を殺すというものです。熱でがん組織のたんぱく質を変性させ(熱凝固といいます)、がん組織を構成する細胞を殺す治療法とも説明されます。
 非常に径(けい)の小さいニードルを使うので、治療によって遺る傷跡は非常に小さく、メスを使う手術に比べて身体の負担も少なくて済ませることができます。早期の非常に小さな段階にあるがんの治療法として注目されています。肝臓がんの治療法としては2004年に公的医療保険による償還の対象となっていますが、乳がんでは本格的に患者さんへの試行が始まって日が浅いことから、前述の通り研究の一環として行われています。

患者さんに求められる条件も厳しい

 治療が成功するかどうかは、ニードルががん組織に正確に刺入され、しかも取りこぼしなく、がん組織を死滅させられるかどうかにかかっています。もし、取りこぼすことがあれば、残遺がんが成長して、再発することになります。原理は簡単ですが、正確に実施できることが、RFAの成否のカギを握っています。

 RFAの希望者が知っておかなければならいことは①治療法の対象となる人の基準、②RFAのメリットとデメリットです。
 <RAFAELO試験で治療の対象となる人の条件>
① マンモグラフィ・超音波・MRI/CT検査でいずれも長径1.5cm以下と確認されている
② 針生検(はりせいけん)で浸潤性乳管がんもしくは非浸潤性乳管がんと診断されている
③ マンモグラフィで広範な石灰化がないことを確認されている
④ 触診および画像検査で腋窩(えきか)リンパ節(脇の下のリンパ節)に転移を認めない
⑤ 遠隔転移(離れた臓器への転移)を認めない
⑥ 除外基準に該当しない
⑦ 前治療なし

RAFAELO試験の概要
試験に参加できる条件(適格基準)


※RAFAELOはRadiofrequency ablation therapy for early breast cancer as local therapy
(早期乳がんに対する局所治療としてのラジオ波熱焼灼療法)の略。

RFAの後では放射線照射を実施

 乳房温存する治療では、残存乳房に放射線治療を追加することにより乳房内再発を減らせることが分かっています。RFA療法を受けた患者さんも同様で全員が放射線照射を受けることになります。RAFAELO試験の目的は、RFAの有効性を調べることにあります。有効かどうかの目安は5年間乳がんが再発しないことを確認することで行われます。再発したかどうかを確実に見極めるために術後3カ月後、12カ月以後6カ月毎5年まで定期的に検査を行います。
 ここまで慎重に行って初めて、RFA療法の有効性が確認され、保険適応を検討する段階になります。ですから、RFA療法を受ける患者さんはこまめに定期検査を受けることも義務づけられることになります。

治療費は病院によって違う


写真2
国立がん研究センター中央病院

 RAFAELO試験に参加している医療機関は国立がん研究センター中央病院(写真2)のほかに北海道がんセンター(札幌市)、千葉県立がんセンター(千葉市)、群馬県立がんセンター(太田市)、国立がん研究センター東病院(千葉県柏市)、岡山大学医学部附属病院(岡山市)、四国がんセンター(松山市)、広島市立広島病院があります(2015年9月現在)。
 手技自体は数分で済みますが、前検査や術後の観察などのために4日間程度の入院が必要となります。治療費は医療機関によって異なりますが、国立がん研究センター中央病院では約17万円ほどです。
 フォロー期間中にがん組織が残っていることが発見された場合は、切除が行われます。こうしたフォロー期間中に再発してしまった場合にきちんと対応できることもRFA療法を実施する医療機関の重要な条件と言えそうです。

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