Health & Money

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「ライフプランを実現させよう」(2)
「保険は晴れた日に買う傘」

株式会社フェリーチェプラン代表取締役
田中香津奈

( 2009/11/20 )

保険商品のユニークな点は?

 前回は、ライフプランを実現するためには、最高を願い、最悪に備えなければならず、そのための有効な手段が保険であることを書きました。第2回は、保険に入ることは、「晴れた日に傘を買う」ような行為であることをお伝えします。「晴れた日に傘を買う」ってどういう意味でしょう。

 保険というのは、具体的な形があって目に見える商品ではありません。一般的な商品と違い、順調な生活を送っていたら、ニーズは生まれないという変わった商品です。通常の買い物は「オリンピックや映画を迫力ある映像で見たいから大画面テレビを買おう」「おなかが減ったのでハンバーガーを食べよう」などというふうに、ニーズが生まれた時に、そのニーズを満たす商品を買う、というパターンになります。

病気になった後で保険に入れたら便利では?

 ある街に1軒の傘屋さんがあったとします。この店では500円、1500円、3000円の3種類の傘を売っていました。ある晴れた日に、Aさんはこの傘屋さんの前を通りかかって、500円の傘を買っておきました。500円と行っても、ちゃんと雨を防げるしっかりした傘です。Aさんが傘を買うのを見ていたBさんは「こんなに晴れているのに・・」と不思議に思いました。翌日天気は曇り空に。傘屋さんの500円の傘はすでに売り切れて、1500円と3000円の2種類の傘しか残っていませんでしたが、Bさんは「曇りといっても、雨が降っているわけではないから」と思って傘を買いませんでした。そして翌日、天気は大雨に。Bさんはあわてて傘屋さんに行きましたが、もう3000円の傘しか残っていませんでした。Bさんは後悔しました。「500円の傘を買っておけば良かった・・・」。

 一般的な保険で、「検査でがんが見つかった後に、がん保険に加入する」「余命半年と言われたから、死亡保険に加入する」といったことが可能になったらどうなるでしょうか? 少なくとも日本中の入院患者が、一斉に保険に加入することになるでしょう。お金の動きでみれば、保険会社の支払いはすぐ膨れあがり、保険料として集めた原資がすぐ底をつき、保険商品として成り立たなくなります。なぜならそのような保険は、健康な人ほど損をする確率が大きいことが明白なので、健康な人はそんな保険には入らなくなるからです。

 もうおわかりでしょう。つまり保険というのは基本的に、雨が降ってきて(病気やけがをして)ニーズが生まれたから傘(保険商品)を買うというものではなく、将来の雨(病気やけが)を予想して、それが不要な(ニーズがない)うちに買っておかなければならないという、特殊な商品だということです。

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保険は晴れた日に買う傘を表すイラスト

“ちょっと曇り空”の状態で、絶対に“安い傘”は買えないの?

 私は現在、一般の方向けの保険相談も行っていますが、相談者のうち3〜4割は病気になってからの来訪で、そのほとんどが「今から入れる保険はありませんか?」という内容です。特定の病気に限定されますが「病気になってからでも加入でき、その後入院するようなことになれば給付金が支払われる」というような保険は、あるにはありますが、先に述べた傘の例のように、高い保険料を支払わざるをえず、内容も一般的な保険に比べると良くないものです。

 では健康状態が「“晴れ”というほど健康そのものではない。でも“雨”というような、重い病気になってしまったわけではない。いわば“ちょっと曇り”の状態」であれば、絶対に“安い傘”、つまり普通の保険商品は買えないのでしょうか?

 保険会社が、申込者の健康状態を把握するのに利用するのが「告知」です。保険金額が比較的高い場合は医師の診断書が必要になりますが、そうでない場合、多くのケースでは、書面で過去5年程度の健康状態を自己申告すればすみます。保険会社は、病気の種類・症状に応じた引き受けをしていますので、指定された期間に病気をしたことがあったからといって、絶対に保険に入れないわけではありません。

不都合なことは書かない方が有利なのでは?

 「病歴を正直に書くと加入できない」と思い込んでいる人は意外に多く、そのへんを省いたりごまかしたりしがちです。しかしそれは「告知義務違反」となり、保険金・給付金の請求時に提出する医師の診断書などでそれが発覚すると、保険金が出ないことはもちろん、今まで支払った保険料も戻りません。

 30歳前後の女性に多い「子宮筋腫」の告知を例に説明しましょう。保険会社としては「手術をしたかどうか」「大きさの変化があるかどうか」などの情報を把握したいのであって、特に問題がなければ、普通に、あるいは条件付きで保険に入れるケースが多いようです。

 しかし申込者が、告知が不利になると思いこんで、単に「子宮の病気」などとだけ書いて、求められている質問事項にいいかげんに答えると、加入が認められないケースはよくあることです。まったく同じ症状でも「詳細に記入した人は認められ、あいまいに記入した人は加入できなかった」ということが起こります。だから“ちょっと曇り”という健康状態の場合は、告知での質問事項に対して、できるだけ詳細に、ありのままを申告することが大切なのです。

 次回(最終回)は、保険にはどんな種類があるのかをわかりやすく具体的にお伝えします。

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田中香津奈(たなか・かづな)

株式会社フェリーチェプラン代表取締役
ファイナンシャルプランナー/住宅ローンアドバイザー/きき酒師

外資系生命保険会社退職後、ファイナンシャルプランナーの資格を取得。2005年フェリーチェプラン設立。「攻めのお金」と「守りのお金」という視点での、独自のマネー解説は分かりやすいと好評。保険、投資、不動産、クレジットカード、電子マネーと幅広い分野に精通し、テレビ出演や新聞・雑誌への執筆多数。著書に『晴れた日に傘を買う人はお金が貯まる』(扶桑社)がある。日本酒にも造詣が深く「きき酒師」の資格も持つ。
<公式サイト:http://www.fp-kazuna.com

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