Health & Money

Health & Money タイトル画像

知ってトクする「あの制度」(1)
「高額療養費」でお金が戻ってくる!?

ライター/ファイナンシャルプランナー
西山美紀

( 2010/03/30 )

医療費が8万100円を超えたら、お金が戻る?

 医療費がたくさんかかった人に、返金されるうれしい制度があるのをご存知ですか?例えば、A子さんが子宮筋腫になり、手術・入院で21万円を支払ったとします。21万円はなかなか痛い出費ですが、この場合、なんと12万5570円も戻ってくるのです! 

 これは、1カ月間に病院窓口で支払った医療費の自己負担額が多い場合、払い戻してくれる制度「高額療養費」に基づくもの。70歳未満の一般所得者(標準報酬月額が53万円以上なら「上位所得者」、市区町村民税の非課税者などの「低所得者」、それ以外の人が「一般所得者」となる)なら、8万100円を超えた場合が対象になります。

知ってトクする「あの制度」イラスト 70歳未満の一般所得者なら、1カ月の医療費自己負担限度額はこれだけでOK!

 つまり、先ほどの子宮筋腫になったA子さんは、病院で21万円を払ったということは、自己負担率が3割ですので、総医療費は70万円ということになります。70万円は26万7000を超えているので、それを引き算すると43万3000円。その1%は4330円。それに8万100を足した8万4430円を、21万円から引くと、12万5570円になるという計算です。

21万円 -{8万100円+(70万円-26万7000円)×1%}=12万5570円

「計算式がややこしそう……」と思っても大丈夫。詳しい計算は健康保険組合がしてくれるので、ひとまず「8万100円を超えたら要チェック」と覚えておきましょう。

「高額療養費」をしっかりもらうためのポイントとは?

 ただし、「高額療養費」をもらえるには、注意しなければならないポイントがいくつかあります。順番に説明していきましょう。

(1)「健康保険適用」のお金のみ
 健康保険が適用されるものが対象となるため、美容目的の歯科矯正や自然分娩での出産、個人的都合で利用した差額ベッド代、先進医療の技術料など、保険が適用されないものは×。ただし、帝王切開の出産は、保険適用なのでOKです。

(2)「月ごと」に計算される
 「1日〜月末」の間の計算となり、月をまたがると別計算になります。例えば、4月30日に8万円、5月20日に12万円などと、月をまたいで支払った場合は、4月分は「8万100円」を超えないので対象外に、5月分の12万円のみ対象となります。

(3)「病院ごと」だけでなく、内科や外科などの「診療科ごと」に別計算
病院や診療所が違っても、別計算になります。また、総合病院で、内科と外科、内科と歯科など、同時に受診した場合でも、診療科が違えば別計算になり、合算することはできません。

(4)「入院」と「通院」でも別計算
 入院と通院も別計算になります。例えば、4月10日、12日に通院で検査を行って合計3万円を支払い、4月15日〜20日に入院・手術をして8万円支払った場合、通院分と入院分は合算できません。両方とも「8万100円」を超えないので、対象外になります。

 なんだか、条件に制限が多いですね。しかし、お得なポイントもあります。それは、「1カ月間に1人、2万1000円以上の医療費の支払いがあった場合は、家族で合算できる」ということ。

 例えば、4月1日〜30日の間に、B子さんが外科手術で5万円支払い、夫のC男さんが、内科に通院して4万円支払ったとします。それぞれ2万1000円以上になるので合算可能で、2人分合算して9万円になり、8万100円を超えているので対象となります。9870円も戻ってくる計算です。

21万円 -{8万100円+(70万円-26万7000円)×1%}=12万5570円

時効は2年間、自分で手続きを忘れずに!

 「高額療養費」の対象になることが分かって、「お金が戻ってくる!」とただ喜んでいても、自動的に戻ってくるわけではありません。基本は自己申請が必要なので、健康保険組合に忘れずに申請をしましょう。ただし、健康保険組合によっては、申請をしなくても自動的に払い戻しをしてくれる場合もあります。

 ちなみに、筆者が国民健康保険に入っていて、帝王切開の出産で高額療養費の対象になったときは、該当する市区町村から「高額療養費の対象になるので2年以内に手続きに来てください。返金額は○○円です」と記された手紙が来ました。また、大手企業の健康保険組合は、自動的に連絡をくれたり、払い戻してくれるところもあるようです。

 申請の時効は2年間です。「そういえば、去年の○月に医療費がたくさんかかったような……」などと心当たりがある人は、さっそく申請してみましょう。

 さらに、「高額療養費」をうまく活用するためには、先ほどの要注意ポイント(2)の、「月ごと」の計算を意識することが大切です。例えば、医師から「入院日を、3月30日と4月2日のどちらにしますか?」と聞かれて自由に選べる場合は、「4月2日」を選んだ方が、結果的におトクになる可能性が高いのです。

 2日程度の短期入院の場合はその限りではありませんが、「3月30日」を選んだとして、入院期間が長く4月までさしかかると、入院費の支払いは3月分と4月分の2回に分かれます。合計すれば8万100円を超えたであろう入院費も、3月分と4月分に分けると、どちらも8万100円に満たないことも起こり得ます。ですから、お金が戻ってくる可能性の高い「4月分のみ」の支払いになるよう、「4月2日」を選ぶことをお薦めするわけです。もちろん、急いで入院・手術した方がよい場合は、そちらを優先してくださいね。せっかくのうれしい制度なので、以上のポイントをおさえて上手に利用しましょう。

 次回は、最近耳にするけど、実際どんな制度なの? という人が多い「後期高齢者医療制度」について紹介します。高齢者向けの制度ですが、実はこの制度から、「若い世代も要注意!」な点が見えてきました。詳しく説明しますので、ご期待ください。

西山美紀写真

西山美紀(にしやま・みき)

ライター/ファイナンシャルプランナー

出版社勤務後、フリーライターに。ファイナンシャルプランナー資格取得。女性誌やマネー誌、ウェブなどで「女性の生き方」「マネー」「ヘルスケア」をテーマに、執筆・インタビューで活躍中。特に初心者向けのマネー記事(貯蓄・節約など)は分かりやすく、実践的だと好評。また、27歳のときに母が末期癌になり、家族で在宅医療を選択。会社の介護休職を1年取得し、自宅で看取った経験から、患者とその家族の心についても関心が高い。2児の母でもある。
ライターNのお仕事×子育てブログ」更新中。

▲ PAGE TOP