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知ってトクする「あの制度」(2)
「後期高齢者医療制度」は、若いあなたも要注意!

ライター/ファイナンシャルプランナー
西山美紀

( 2010/04/27 )

“75歳以上”の人の制度ではあるけれど……

知ってトクする「あの制度」イラスト

 2008年4月にスタートした「後期高齢者医療制度」。よく耳にはするけれど、「お年寄りの制度だから自分には関係ない」と思っている方はいないでしょうか? かくいう筆者も30代なので、「75歳以上の人の制度だし、個人的にはまだまだ関係なさそう……」と思っていました。でも、実は若い人にこそ要注意な点が見えてきました。

 まず、後期高齢者医療制度を、“75歳以上の人の視点”で簡単にまとめてみました。

(1)75歳になるまでに加入していた国民健康保険や会社の組合健保は脱退し、75歳で自動的に加入。保険料は基本的に年金から天引きされ、金額は都道府県ごとに異なる。(※参考1)

  (2)息子の被扶養者などで、それまで保険料を払っていなかった人でも、保険料の負担が発生する。例えば、東京都で80歳の人(公的年金等の収入79万円)が、55歳の子(営業所得390万円)の扶養になっていた場合、それまでの保険料は0円だったのが、年間3万7800円もかかるようになる。(※参考2)

(3)基本的に、病院窓口で支払う医療費はそれまでと変わらない(これまでと同じく1割負担。現役並みの所得者は3割負担)

※参考1 厚生労働省「“後期高齢者医療制度”についてご説明します」
※参考2 東京いきいきネット:後期高齢者医療制度 保険料算定例より

 今までは、保険料を納めるところ(健保組合など)と、使うところ(市町村)が分離していたのを、「同じところ(都道府県)にして、財政・運営管理を明確化しましょう」「都道府県ごとの医療水準に応じた保険料を、高齢者みんなで分担しましょう」というスタンスに変更したのです。それなら、若い世代には、まったく関係も影響もないように感じます。ところが、そういうわけでもないようです。

今後健康保険料アップで給与の手取りが減る可能性も!

人口ピラミッドの変化

  「後期高齢者医療制度」の財源は、そのうちなんと4割が、現役世代の負担なのです(内訳は、5割=税金、4割=現役世代の支援金など、1割=高齢者の保険料負担)。75歳以上の高齢者は、今後どんどん増えていくため、4割負担の現役世代の支援金(つまり、若いあなたの保険料)も、今後さらに必要になることは明らかです。

 2009年に政権が自民党から民主党に変わり、現在の後期高齢者医療制度を見直す動きが出ています。しかし、今後膨らんでいく高齢者の医療費を、若い世代がある程度負担しなくてはならないことに変わりはないでしょう。もともと、組合健保は赤字で苦しんでいるところが多く、破綻したというニュースもよく耳にします。破綻をなんとか防ぐために、すでに保険料の引き上げをしているところもあります。
   若い人にとっての今後の問題点は2つあります。順に説明しましょう。

(1)健康保険の保険料がアップし、給与の手取りが少なくなる可能性も
 今後、保険料がアップする組合がさらに増え、その分、給与の手取りが少なくなる可能性があります。筆者は数年前まで会社員だったのですが、お恥ずかしながら、毎月の給与明細では「手取額」くらいしかチェックしていませんでした。こういう方もいらっしゃるのではないでしょうか。保険料がアップしても、あまり実感がないまま、「あれ? いつの間にか手取額が少なくなっている」という事態もありえるのです。

(2)今後、自分で払う医療費が増える可能性大
 現在、健康保険が適用になる医療費は、基本的に「3割負担」ですが、以前は「1割負担」「2割負担」と、自己負担はわずかでした。割合が増えてきていることを考えると、今後3割負担からさらにアップする可能性もありそうです。
 また、今は若くても、年齢を重ねていくと、病気やケガをする場面も増えていきます。「今まではほとんど病院にいったことがないから大丈夫」「自分だけは、病気やケガと縁がない気がする」と思っている人も、将来医療費がかかるリスクを頭に入れておきたいものです。

自分の身は自分で守る。「老後のお金(=医療費)」も意識しよう

 このように、今の若い人でも、「健康保険料」や「自分自身の医療費」が今後増えていく可能性があることを意識する必要があります。ずっと健康でいられたら幸せですが、病気やケガは、いつ起こるかわかりません。急に医療費が必要になったときに困らないよう、ある程度の備えをしておきましょう。

 今のところ健康保険の適用範囲内なら、前回のコラムでお伝えした「高額療養費」の制度があるため、1カ月当たり最大でも約9万円(一般所得の場合)を超えることはありません。でも、差額ベッド代などのほか、健康保険が適用されない「自由診療」の支払いについては全額自己負担のため、自分の預貯金か民間の医療保険が必要になります。

 また、日々進歩している先進医療の技術料も、健康保険の適用範囲ではなく、何十万、何百万円単位でかかるものもあると聞きます。しっかり貯蓄をしておける人なら大丈夫ですが、そうでない人は医療保険を検討するのもいいと思います。

 よく、「医療保険は必要なのか」と迷う人が多いのですが、将来の病気やけがはいつ起こるか、またどのくらい医療費がかかるのかは分からないので、残念ながら「正解」はありません。自分自身の性格によって決めるのが1つの手かもしれません。

1)こんな性格の人は、医療保険の検討を
  ・病気やケガをしたときに「あのとき医療保険に入っていれば……」と後悔しそう
  ・出費が多く、貯蓄が少ない。計画的な貯蓄が苦手

2)こんな性格の人は、医療費に備えてしっかり貯蓄を
  ・医療保険を使う機会がなかったとき、「毎月の保険料金がムダだった」と後悔しそう
  ・十分な貯蓄があり、貯蓄が得意

 「人生の3大支出」には、「住宅購入」「子育て費用(教育資金)」「老後のお金(医療費含む)」が挙げられます。この中で、「老後のお金(医療費含む)」は、遠い将来のことに感じられて、つい先送りにしがちです。

 老後にもしお金が少なくなっても、家賃や生活費はある程度抑えることができますが、お金がないからといって、かかってしまった病気・ケガの治療費を抑えることは、果たしてできるでしょうか。自分の身は自分で守る気持ちで、医療費についても、しっかり準備しておくことが大事です。

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西山美紀(にしやま・みき)

ライター/ファイナンシャルプランナー

出版社勤務後、フリーライターに。ファイナンシャルプランナー資格取得。女性誌やマネー誌、ウェブなどで「女性の生き方」「マネー」「ヘルスケア」をテーマに、執筆・インタビューで活躍中。特に初心者向けのマネー記事(貯蓄・節約など)は分かりやすく、実践的だと好評。また、27歳のときに母が末期癌になり、家族で在宅医療を選択。会社の介護休職を1年取得し、自宅で看取った経験から、患者とその家族の心についても関心が高い。2児の母でもある。
ライターNのお仕事×子育てブログ」更新中。

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