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気になる医療・トクする情報(1)
診療報酬改定で医療がどう変わる? 病院編

医療ライター
渡辺千鶴

( 2010/05/31 )

10年ぶりの価格引き上げ、急性期病院に4000億円を配分

10年ぶりに引き上げられた診療報酬
10年ぶりに引き上げられた診療報酬

 今年4月に診療報酬の改定が行われ、医療費の価格が変わったことをご存知ですか。診療報酬とは、医療機関が提供する治療行為や医療サービスに対して支払われる公定価格のことです。国民皆保険制度のもと、公的医療保険から医療費を拠出する仕組みを持つ日本では、厚生労働大臣の諮問機関である中央社会保険医療協議会(中医協)での話し合いによって診療報酬、つまり医療費の価格が決まります。ちなみに中医協の委員は、医療側委員、支払側委員(保険者)、公益委員(患者)の3者の代表で構成されています。

 診療報酬の改定は2年に1回のペースで定期的に見直しが行われており、今年は10年ぶりに診療報酬が引き上げられたことでも話題になりました。国は医科分野の診療報酬を約4800億円増額し、そのうち崩壊寸前といわれた急性期病院(急性期入院医療)に約4000億円も配分したのです。中でも深刻な医師不足により勤務医の疲弊がはなはだしい救急、小児、産科、外科の各分野に手厚く配分したのが今回の改定の大きな目玉の1つです。

手術料の大幅な値上げに伴い、患者の自己負担も増大

 ところで、今回の診療報酬の改定は、私たちが医療を受ける上でどのような影響をもたらすのでしょうか。まず挙げられるのは、医療費の自己負担が増えるということです。手厚い配分が行われた外科の分野では、難易度が高くて人手のかかる手術料が30〜50%引き上げられ、約1800項目ある手術のうち、約半数が値上げの対象になりました。

 手術料の大幅な値上げに伴い、患者の自己負担も増大しますが、これに対する患者側の対策としては、(1)高額療養費制度(医療機関に支払った自己負担金が一定の限度額を超えたときに、超えた分の金額が払い戻される)を申請する(2)入院時に限度額適用認定証(医療機関への支払いが最初から自己負担限度額になる制度で、後から高額療養費の請求をする必要がない)を医療機関に提出する----という2つの方法があります。詳細については、医療機関のソーシャルワーカーまたは医療費の担当窓口に確認してください。

価格が50%引き上げられた手術例
価格が50%引き上げられた手術例

入院期間がますます短くなり、高齢者が影響を受けそう

 さらに診療報酬の改定は単に医療費だけでなく、医療システムにも大きな影響を及ぼすため、病院の診療状況が変わる可能性があります。今回の改定では、14日以内の早期入院に加算される金額が日額4280円から4500円に引き上げられました。入院期間を短くするほど、病院の利益が生まれる仕組みのため、入院期間はますます短くなるでしょう。

 この影響を受けるのは長期入院になりやすい高齢者で、急性期病院で入院治療を受けるのが難しくなるおそれがあります。また、入院できたとしても症状が安定すれば退院や転院を余儀なくされるので、後で困らないようにあらかじめ入院期間を確認し、早めにソーシャルワーカーや病棟看護師に相談したいものです。

院内トリアージの導入で、軽症は長く待たされることも

 小児救急の分野では看護師らが子どもの病状の緊急度を判定する「院内トリアージ加算」(300円)が新設されました。院内トリアージとは、重症と軽症の患児が混じり合う救急外来から重症の患児を拾い出し優先的に治療することを目的に、既に一部の病院で導入されているものです。トリアージを受けることによって保護者も受診の必要性の判断基準を学べるため、救急外来の混雑を緩和する効果も期待されています。加算がついたことで、これから院内トリアージを実施する医療機関が少しずつ増えてくるでしょう。

 院内トリアージ制のもとでは、緊急度に応じて診療の順番が決まり、重症であれば速やかに治療を受けられますが、軽症と判定されると長く待たされることがあります。患者側もトリアージの意義をよく理解し、診療に協力することが必要です。なお、救急車で搬送された場合も院内トリアージの対象となり、例外ではありません。

 このように診療報酬の改定は医療費をはじめ、さまざまな医療場面において変化をもたらします。できるだけ不利益を被らないよう、また、賢く医療を受けるためにも、改定の内容とその対策をよく知ることが大切です。

 次回は「診療報酬改定で医療がどう変わる?」の「マネー編」として、患者にとってより直接関係する医療費などの改定について解説します。中でも、診療内容や薬の種類などが分かる明細付き領収書の発行義務付けの話題を中心にまとめます。ご期待ください。

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渡辺千鶴(わたなべ・ちづる)

医療ライター

愛媛県生まれ。京都女子大学卒業。医療系出版社を経て、フリーランスに。医療・看護・介護分野を中心に編集・執筆に携わる。共著に『日本全国病院<実力度>ランキング』『知っておきたい病気の値段のカラクリ』(共に宝島社刊)『がん—命を託せる名医』(世界文化社刊)などがある。東京大学医療政策人材養成講座1期生。現在、総合女性誌『家庭画報』で「希望をつなぐ先端医療」を連載中。

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