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気になる医療・トクする情報(2)
診療報酬改定で医療がどう変わる? マネー編

医療ライター
渡辺千鶴

( 2010/06/23 )

原則すべての患者に診療明細書の無料発行が義務化

 診療報酬の改定により、今年4月から原則すべての患者に診療明細書を無料発行することが医療施設(病院、診療所、薬局)に義務付けられました。これまでは、レセプト(診療報酬明細書)を電子請求する医療機関に限り、患者から求められた場合に診療明細書を発行する決まりで、医療機関には実費分程度の発行手数料の請求も認められていたので、今回の改正はとても大きなルール変更だといえます(「すべて義務付け」とはいえ、医療機関のIT投資状況にもよるので「原則」とし、下記に挙げる例外措置が設けられています)。

 これは、厚生労働大臣の諮問機関である「中央社会保険医療協議会(中医協)」の公益委員(患者代表)や肝炎などの薬害被害を受けた患者たちが長年、強く要望してきたもので、国では診療明細書の無料発行を通じて、医療の透明化や患者への情報提供を積極的に推進していきたいと考えています。

 なお、9割以上の病院、半数程度の診療所ではレセプトを電子請求していますので、無料発行に対応できますが、医療施設の事情によって対応できない場合があり、発行のルールが違います。各医療施設の診療明細書の発行手続きに関しては院内掲示で確認するか、会計窓口でお尋ねください。

  • 電子請求が義務づけられている病院・診療所・薬局 → 明細書を無料で発行
  • 電子請求が義務づけられているが、明細書発行機能がついていないコンピュータを使用または自動入金機の改修が必要な場合 → 希望する患者に明細書を発行。実費程度の発行手数料の請求ができる
  • 電子請求が義務づけられていない病院・診療所・薬局 → 明細書を発行している場合:希望する患者に明細書を発行。実費程度の発行手数料の請求ができる → 明細書を発行していない場合:明細書を発行していないことを院内掲示する

医療費の内訳だけでなく治療内容まで詳しく分かる

 では、4月以降、領収書の中身はどのように変わったのでしょうか。これまでも、医療機関が発行する領収書によって私たち患者は、かかった医療費の内訳を知ることができました。例えば、糖尿病の継続的な投薬治療を受けている場合、領収書(表1)を見れば「再診料」「医学管理料」「検査料」「処方せん料」に医療費がかかり、その値段がいくらだったのかということが分かります。

 診療明細書では、さらに項目ごとの内訳が明記されるようになり(表2)、注射や点滴を受けた場合、使用した薬剤名や投与回数も記載されます。つまり、診療明細書から医療費だけでなく、治療内容まで詳しく知ることができるようになったのです。

診察領収書

 このため、患者側のメリットとしては、 (1)自分が受けた治療内容を確認できる(2)治療内容に疑問を持ったとき、診療明細書をもとに調べたり、第3者に確認したりすることができる(3)薬害に遭ったとき、診療明細書があれば薬剤を投与された証明になる----といったことなどが挙げられています。また、医療施設の診療行為が診療明細書で透明化されることにより、医療費の不正請求や医療事故などの防止につながることも期待されています。

診察明細書

「見てもよく分からない」と患者側には戸惑いも

 その一方で、診療明細書の発行を巡り、医療現場では多少の混乱も起こっているようです。まず、診療明細書には専門用語が多いため、「読むのが面倒」「見てもよく分からない」と戸惑う患者が少なくないようです。ある個人診療所の医師が自院の患者に行ったアンケート調査では、「診療明細書は不要」と答えた患者が半数近くに上ったという報告もあります。

 また、多くの医師たちが懸念するのは、「診療明細書の項目の説明に時間を取られるのではないか」ということです。1日に何十人もの患者を診療しなければ採算が取れない外来診療では、患者にじっくり説明する時間的余裕はありません。「それならば、病気の説明にもっと時間をかけたい」というのが医師の本音のようです。

診療明細書は“個人情報” 取扱いや保管には留意

 しかし、診療明細書の内容を説明する用紙を配布したところ、心配したような混乱はなかったという病院の取り組みもあります。確かに診療明細書には難解な用語が多く、見てもよく分からないのが実情ですが、患者もできるだけ理解する努力が必要です。高額な薬剤や治療が増え、医療費の自己負担が高まる中、せめて何にどのくらいの費用がかかるのか、医療費の内訳くらいは目を通しておきたいものです。(表3)では領収書に記載されている主な項目について説明していますので、診療明細書を読むときの参考にしてください。

表3 領収書の主な項目の見方
表3 領収書の主な項目の見方

 また、前述したように、診療明細書の情報は医療トラブルの際などにも役立ちます。面倒でもきちんと保管しておきましょう。なお、治療内容が詳細に記されている診療明細書は“個人情報”の1つです。取り扱いや保管には十分に留意してください。

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渡辺千鶴(わたなべ・ちづる)

医療ライター

愛媛県生まれ。京都女子大学卒業。医療系出版社を経て、フリーランスに。医療・看護・介護分野を中心に編集・執筆に携わる。共著に『日本全国病院<実力度>ランキング』『知っておきたい病気の値段のカラクリ』(共に宝島社刊)『がん—命を託せる名医』(世界文化社刊)などがある。東京大学医療政策人材養成講座1期生。現在、総合女性誌『家庭画報』で「希望をつなぐ先端医療」を連載中。

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