Health & Money

Health & Money タイトル画像

気になる医療・トクする情報(3)
診療報酬改定で医療がどう変わる? 在宅・地域医療編

医療ライター
渡辺千鶴

( 2010/07/30 )

在宅医療や介護にかかる費用も用意しておこう

 この4月に改定された診療報酬は、急性期病院に手厚い配分が行われたことが大きな特徴の一つですが、同時に在宅医療を充実するための報酬も改定されたり、新設されたりしています。医療や介護を必要とする高齢者が急増する中、医療費の高騰だけでなく、病床数の不足なども懸念されているため、国では在宅医療に取り組む医療機関――特に診療所を増やすことが早急の課題となっています。そのため、診療所をはじめとする医療機関がもっと取り組んでくれるよう在宅医療にかかわる診療報酬を手厚くしたのです。

 また、診療報酬として認められるということは、患者も相応の自己負担が必要になります。つまり、生活の質を高める在宅医療や地域医療において、よりよいサービスが受けられるようになりますが、それなりに自己負担も増えます。治療費や入院費だけでなく、退院後も安心して療養生活を送るための費用をきちんと見積もっておきましょう。

 では、どのような部分で診療報酬の改定が行われたのでしょうか。
まず、往診料が6500円から7200円に引き上げられました。慢性疾患などによって自宅で療養する乳幼児を往診する場合は、さらに2000円が加算されます。また、診療時間以外も電話で対応する体制を整えた診療所には再診料に30円上乗せする「地域医療貢献加算」が新設されました。

 患者のニーズや状態に応じた在宅医療を提供する観点から、訪問看護の報酬も改定されています。がんの終末期になると訪問看護が毎日必要になることがありますが、診療報酬の算定上、利用できる訪問看護ステーションの数が限定されていました。そのため、訪問看護師の手配がつかず、必要なケアを受けられないということが起こっていました。

 このような事態を改善するため、終末期のがん患者など訪問看護が毎日必要な人に対し、利用できる訪問看護ステーションの数が2カ所から3カ所に拡大されました。また、同時に複数の看護師による訪問看護を行った場合、週1回4300円(准看護師の場合は3800円)が加算できる「複数名訪問看護加算」も新設されました。

入院中に退院後の介護サービスが調整できるように

表1:地域連携診療計画に基づく連携 診察領収書

 一方、国では急性期から在宅まで切れ目のない医療を提供することを目標の1つに掲げています。この目標に少しでも近づくために、今回の診療報酬の中でも、医療連携や在宅・介護支援にかかわる部分に報酬を手厚く配分しています。

 まず、大腿骨骨折や脳卒中の患者に対し、地域のさまざまな医療機関や介護サービス事業所が連携し医療を提供した場合、回復期のリハビリテーション病院などには「地域連携診療計画退院計画加算」(1000円)を、200床未満の病院や診療所には「地域連携診療計画退院時指導料(II)」(3000円)を新しく設定しました(表1)。

 また、疾患の種類にかかわらず退院後に介護サービスを受ける必要があると判断した患者に対し、入院中からケアマネジャーと連携しながら退院後のケアプランの作成などを行った場合、急性期病院は「介護支援連携指導料」(3000円・入院中2回)を算定できるようになりました。

 さらに、退院した直後の患者の在宅医療を引き受ける診療所などに対しては「在宅移行早期加算」(1000円)が新設されています。

在宅に取り組む診療所を「かかりつけ医」にすると安心

 さて、これらの報酬の中で、最も話題になったのは「地域医療貢献加算」です。今回の改定では診療所の再診料が710円から690円に引き下げられました。地域医療貢献加算が新設されたのは、この再診料の引き下げ分を補てんする意味合いもあるといわれています。

 地域医療貢献加算には「24時間365日対応」という厳しい条件がついており、多くの診療所の医師たちは「わずか30円のために過労死基準を超えるような働き方はできない」と猛反発しています。この加算を算定するには国への届け出が必要ですが、ある医療経営情報紙の調査によると、5月時点で関東信越地区の届け出数は4396件で、この地区の診療所総数(2万9065件)の15%に過ぎませんでした。

 このように現場の医師や看護師にしてみれば、対価と見合わない改定もあるため、国の思惑どおり、在宅医療や地域医療を巡る状況がすぐに変わるわけではありません。しかし、急性期病院に入院できる期間が短くなり、長期入院を必要とする患者――特に高齢者は、転院先の医療機関を見つけるのに大変苦労していますので、今回の改定が以前よりもスムーズな在宅や施設への移行につながることを期待したいものです。

 患者側も、医療費の面においても、急性期病院に入院中から退院後のサポートを受けられる体制になったことを知り、退院後の生活で心配なことがあれば遠慮なく医師や看護師、ソーシャルワーカーに相談しましょう。これからは在宅医療に取り組む診療所も増えてきますので、そうした診療所を「かかりつけ医」にするとさらに安心です。

 なお、次回(2012年度)の診療報酬改定は、介護保険の介護報酬とダブル改定となるため、介護サービスと連動した部分での医療費のさらなる値上げが予測されています。

渡辺千鶴写真

渡辺千鶴(わたなべ・ちづる)

医療ライター

愛媛県生まれ。京都女子大学卒業。医療系出版社を経て、フリーランスに。医療・看護・介護分野を中心に編集・執筆に携わる。共著に『日本全国病院<実力度>ランキング』『知っておきたい病気の値段のカラクリ』(共に宝島社刊)『がん—命を託せる名医』(世界文化社刊)などがある。東京大学医療政策人材養成講座1期生。現在、総合女性誌『家庭画報』で「希望をつなぐ先端医療」を連載中。現在、朝日新聞山梨県版で医療コラム「医療の現場から

新メディアスタート!

からだケアナビ

先進医療の技術内容や医療施設の検索は

先進医療ナビ

Health & Money

▲ PAGE TOP