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気になる医療・トクする情報(5)
医療費負担軽減ノウハウ
立て替え払いが難しいときは無利子の貸付制度を

医療ライター
渡辺千鶴

( 2010/09/30 )

無利子で高額療養支給額の8〜9割を貸し付ける「高額療養(医療)費貸付制度」

 乳がん患者のA子さん(28歳)は、外来で抗がん剤治療を受けることになり、毎月の治療費の自己負担額が12万円ほどに増えることが分かりました。このため高額療養費制度の利用を考えましたが、事務員として働いているA子さんの収入では生活するのが精一杯で、高額療養費制度による給付を申請しても支給までの間、立て替え払いができません。

 そこで、ソーシャルワーカーに相談し、「高額療養費受領委任払い」を受けることにしました。ところが、A子さんが加入する公的医療保険では、この制度を実施していませんでした。

 前回のコラムで、治療費が高額になったとき、医療機関窓口での支払いを軽減する方法として高額療養費受領委任払い制度を紹介しました。しかし、A子さんのケースのように、この制度を実施していない公的医療保険があります。そのような場合は「高額療養(医療)費貸付制度」が助けとなりますので、この制度を行っているかどうか、加入している公的医療保険に尋ねてみましょう。

 高額療養(医療)費貸付制度とは、高額療養費が還付されるまでの間、立て替え払いが困難な患者さんに対して、高額療養費で払い戻される金額の8〜9割を無利子で貸し付けるものです。公的医療保険によっては、保険料を滞納していると、この制度を利用できないことがありますので、詳しいことは加入する公的医療保険の担当窓口にお問い合わせください。

 さて、A子さんも高額療養費(医療)貸付制度で当座の医療費を借りて、治療費の自己負担額分を支払い、予定どおり外来で抗がん剤治療を受けることができました。

年間医療費が10万円を超える場合は医療費控除の手続きを

 治療が長期化すると、治療費だけでなく、通院費などにもお金がかかります。医療を受けるために必要な費用の中には、一定金額の所得控除を受けられる医療費控除の対象となるものがあり、世帯合算で年間に支払った医療費が10万円を超える場合は、下記の計算式によって算出された医療費を控除して所得税が計算され、納税額が軽減されます。

 ・医療費控除の計算式
医療費控除額=実際に支払った医療費の合計額-保険金などで補てんされる金額-10万円

 医療費控除の対象となるものには、治療費をはじめ、通院や往診にかかる交通費、入院したときの病室代(個室料は除く)や食事代、治療や療養に必要な医療器具・医薬品の購入、あん摩マッサージ指圧師・はり師・きゅう師・柔道整復師による施術料、保健師や看護師・准看護師による看護料、介護保険の施設・居宅サービスの自己負担額などがあります。

医療費控除の対象となる医療費

出典:国税庁平成21年分「所得税の確定申告の手引き」


 人間ドックや健康診断、特定健康診査の費用は医療費控除の対象になりませんが、健康診断の結果、重大な病気が見つかって治療を受けたとき、あるいは医師の指示のもとで特定保健指導を受けたときは、人間ドックや健康診断にかかった費用も治療に先立って行われる診察と見なして医療費控除の対象として認められます。

 医療費控除を受けるには、確定申告書の提出が必要です。確定申告書には領収書などの医療費支出を証明する書類を添付または提示しなければならないので、きちんと保管しておきましょう。詳細については、最寄りの税務署にお問い合わせください。

病気で働けないときは「傷病手当金」や「雇用保険」を申請しよう

 一方、治療や療養のために会社を休む場合は、その期間、公的医療保険で収入の一部が補償されるため、加入する公的医療保険に「傷病手当金」を申請しましょう。休業1日につき、標準報酬日額の3分の2に相当する金額が休業4日目から1年6カ月まで支給されます。

 傷病手当金の申請は、全国健康保険協会の都道府県支部または健康保険組合が受け付けていますが、詳細については勤務する会社の総務課などに確認してください。また、休業が長引いて退職することになっても、傷病手当金の支給開始から1年6カ月までの期間は引き続き、受給できます。

 さらに、病気にかかったことによって会社を退職し、収入が途絶えてしまう場合は「雇用保険」を申請しましょう。雇用保険は一般的に失業保険といわれるもので、退職するまでの2年間に12カ月以上(倒産や解雇の場合は、退職するまでの1年間に6カ月以上)加入していた人が給付の対象となります。

 雇用保険では給与の約5〜8割が保障されますが、病気が原因で退職した場合は、手続き後、約4カ月後に支払われる雇用保険が約1カ月後に支払われます。また、休職中に治療や療養などで30日以上働けない場合は最長3年間、受給期間の延長手続きができます。

 なお、退職後も公的医療保険(国民健康保険は除く)の傷病手当金を継続して受給する人は、失業状態とはみなされず、雇用保険が受給されないため、注意が必要です。雇用保険の申請は、退職後4週間以内に住んでいる地域のハローワークで手続きを行いますが、ハローワークでは退職以前の相談も受け付けています。病気によってやむを得ず、退職することになりそうな場合は、早めにハローワークに出かけ、アドバイスを受けると安心です。

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渡辺千鶴(わたなべ・ちづる)

医療ライター

愛媛県生まれ。京都女子大学卒業。医療系出版社を経て、フリーランスに。医療・看護・介護分野を中心に編集・執筆に携わる。共著に『日本全国病院<実力度>ランキング』『知っておきたい病気の値段のカラクリ』(共に宝島社刊)『がん—命を託せる名医』(世界文化社刊)などがある。東京大学医療政策人材養成講座1期生。現在、総合女性誌『家庭画報』で「希望をつなぐ先端医療」を連載中。

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