Health & Money

Health & Money タイトル画像

気になる医療・トクする情報(6)
医療費負担軽減ノウハウ
医療費が支払えなくなったときの支援制度

医療ライター
渡辺千鶴

( 2010/10/29 )

医療費の自己負担分が扶助される「生活保護・医療扶助」制度

 年金生活者のAさん(66歳)は数年前に咽頭がんを患い、入退院を繰り返しています。高額療養費制度を利用し、抗がん剤治療を受けていましたが、治療が長期化するのに伴い、年金だけでは支払いが追いつかなくなりました。貯蓄や資産もないため、ソーシャルワーカーと相談し、「生活保護」を申請することにしました。

 近年、Aさんのように医療費が支払えなくなり、治療をあきらめる人が増えています。そのような人の最後の手段として、医療費が扶助される「生活保護・医療扶助」制度があります。

  生活保護制度とは、生活が困窮している人に対して最低限の生活を保障するとともに自立を促すことへの支援を目的としたものです。雇用情勢の悪化を受け生活保護の受給世帯は年々増加しており、2009年3月には対前年同月比5.6%増の119万2745世帯に上りました。

生活保護・医療扶助の仕組み >生活保護・医療扶助の仕組み



生活扶助基準額の例 生活扶助基準額の例

 生活保護の受給が認められると、必要に応じて生活、住宅、教育、介護、医療、出産、生業、葬祭の8種類の扶助が受けられます。このうち「医療扶助」では、(1)診察(2)薬剤または治療材料(3)医学的処置、手術、治療など(4)自宅療養に伴うケア(5)入院療養に伴うケア(6)移送についての支給——があります。

 その仕組みは、患者が医療機関で受診する際、福祉事務所などから発行された医療券を提出すると、自己負担なしで必要な医療が受けられ、かかった医療費の自己負担分は福祉事務所などから医療機関に直接支払われるというものです(図参照)。

 生活保護を受給する際、預貯金や持ち家といった資産がないことなどの条件を満たすことが必要です。ほかの支援制度の適応を受けることができる場合や親族からの援助を受けることができる場合は、それらが優先されます。また、生活保護で支給される最低生活費(左表参照)より年金支給額が多い場合にも対象となりません。

 Aさんの場合は生活保護の最低生活費より年金支給額が多かったのですが、入退院を繰り返し、医療費が相当かかるという理由で生活保護が認められたそうです。対象外であっても医療費が多額になる人は、病院のソーシャルワーカーや福祉事務所の担当者に、一度相談してみることをお薦めします。



自治体の「福祉医療費助成制度」や患者団体の助成制度も利用しよう

 障害者やひとり親家庭の母または父、子、低所得の高齢者(65〜69歳)、ひとり暮らしの未亡人、乳幼児などの子どもに対して医療費をサポートする制度もあります。これは「福祉医療費助成制度」と呼ばれるもので、対象となる人が医療機関や薬局を利用したとき、医療費や薬剤費の自己負担分の一部が助成されます。

 この助成を受けるためには自治体(市区町村)への申請が必要で、ある一定以上の所得があると認められません。また、保険外診療の医療費(差額ベッド代、予防接種、健康診断、薬の容器代など)や入院したときの食事代などは助成の対象にならず、高額療養費などで支給される金額も除外されます。詳細については、各自治体の担当課にお問い合わせください。

 また、特定の疾患になりますが、血液がん患者を支援するNPO法人「血液情報広場・つばさ」(橋本明子理事長)では「つばさ支援基金」を設立し、経済的に困窮している慢性骨髄性白血病患者に対し治療費の一部を助成し始めました。患者団体による医療費支援は珍しいのですが、この病気は高額な分子標的薬(商品名:グリベックなど)を原則一生飲み続けなければならず、患者の間で治療費の負担が大きな問題となっていました。

 助成の要件は、(1)慢性骨髄性白血病と診断されて1年以上の治療を受け、現在も治療が必要な状態であること(2)70歳未満であること(3)経済的な事情により治療の継続が困難な状態であること——と定められています。これらの要件をすべて満たしたうえで、高額療養費制度を利用し、前月の医療費自己負担が4万4400円以上になった場合、月額2万円を助成するものです。助成の受付は10月1日から始まっており、2011年3月までの医療費が支援されます。詳細については、つばさ支援基金までお問い合わせください。

国民健康保険料が支払えないときは早めに「減免」の相談を

 一方、医療費だけでなく国民健康保険の保険料そのものが支払えず、無保険状態になる人も増加しています。保険料の滞納がしばらく続くと、自治体(市区町村)の中には通常の保険証の代わりに有効期限が1〜3カ月以内の短期保険証を発行するところがあります。

 短期保険証は、通常の保険証と同様に3割の自己負担で受診できますが、期限が切れるごとに更新の手続きが必要です。また、この制度の本来の目的は、保険料を滞納したことによる制裁ではなく、保険料を納めるための納付相談を実施することにあるので、短期保険証の更新のたびに納付相談を義務づけている自治体もあります。

 さらに、保険料を1年以上滞納すると短期保険証も取り上げられ、代わりに資格証明書が発行されます。しかし、資格証明書では医療費の全額をいったん自己負担しなければならず、病気になっても医療を受けにくい状況に置かれます。そのため受診の遅れが問題となっており、高校生以下の子どもについては、保護者が1年以上保険料を滞納していても、無条件で短期保険証を交付し、救済する制度が導入されています。

 また、自治体(市区町村)の中には災害や病気、倒産や解雇などにより保険料の支払いが困難な人に対して独自の減免制度を実施しているところがありますので、このような制度も利用したいものです。減免を受けるには保険料の納付期限までに必要な書類を添付し、担当窓口に申請しなければなりません。納付期限を過ぎた保険料については減免の対象とならないため、十分に注意しましょう。

 減免制度のほかにも、保険料の支払いの回数を増やす「分割納付」、支払いを延長する「徴収猶予」などの方法もあります。保険料の支払いが難しい人は、早めに自治体(市区町村)の国民健康保険課などに相談するとよいでしょう。

 なお、国民健康保険は、前年の所得が一定額以下の世帯の場合、保険料が減額される仕組みです。減額は前年の所得に応じて自動的に行われますので、所得が低くても前年の所得の申告をしていなければ減額の対象とならないため、この点にも注意したいものです。

渡辺千鶴写真

渡辺千鶴(わたなべ・ちづる)

医療ライター

愛媛県生まれ。京都女子大学卒業。医療系出版社を経て、フリーランスに。医療・看護・介護分野を中心に編集・執筆に携わる。共著に『日本全国病院<実力度>ランキング』『知っておきたい病気の値段のカラクリ』(共に宝島社刊)『がん—命を託せる名医』(世界文化社刊)などがある。東京大学医療政策人材養成講座1期生。現在、総合女性誌『家庭画報』で「希望をつなぐ先端医療」を連載中。

新メディアスタート!

からだケアナビ

先進医療の技術内容や医療施設の検索は

先進医療ナビ

Health & Money

▲ PAGE TOP