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気になる医療・トクする情報(9)
保険薬局100%活用術①
薬を正しく安全に服用するために
保険薬局を賢く選ぼう!

医療ライター
渡辺千鶴

( 2011/01/31 )

医師と薬剤師が協力して薬の効き目や安全性を高めることが「医薬分業」の目的

 病院や診療所、歯科医院で薬を処方された場合、多くの人は院外の保険薬局に処方せん(薬の名前や量が記載された用紙)を持参し、そこで薬を受け取っていることでしょう。これは「医薬分業」といわれる仕組みで、もともとは中世ヨーロッパで始まった古い医療制度です。一説によれば、神聖ローマ帝国のフリードリヒ2世が主治医による毒殺を恐れ、薬の確認を別の者に行わせたことが起源だといわれています。

 日本に医薬分業が導入されたのは明治維新直後のことでした。しかし、漢方医学の長い歴史の中で、医師が薬剤師の役割も担っていたので、西洋医学が主流になっても医薬分業はなかなか進まず、制度化されたのは1956年のことです。そして、本格的に普及し始めたのは近年になってからです。現在、全国の医薬分業率は約60%で、分業率が高い県では約80%、低い県では約30%と都道府県によって大きな格差がみられます。

 医薬分業は、薬を手に入れるために医療機関と保険薬局の2カ所に出向かなければならないことから「二度手間になる」と患者にとって不満もある仕組みですが、薬を処方する医師と薬を調剤する薬剤師の役割を明確に分けることによって、使用する薬をダブルチェックし、薬の効き目や安全性をより高めることに貢献しています。これこそが医薬分業の目的といえます。

薬剤師は患者1人ひとりの薬歴を作成し重複投与や相互作用を確認

 医薬分業の目的を果たすために、保険薬局の薬剤師は薬を調剤するだけでなく、患者がその薬を正しく安全に使用できるよう、さまざまなサポートを行っています。店頭で患者に対して薬の使用方法や、薬の作用・副作用、使用時の注意点などを説明するのはもちろんのこと、処方せんを持参した患者1人ひとりの薬歴も作成しています。

 外部からはうかがい知ることができない部分ですが、薬剤師は薬歴で薬の使用状況を管理しながら、処方された薬がほかの医療機関から出されている薬と重複していないか(重複投与)、既に服用している薬との飲み合わせは問題ないか(相互作用)、過去に同じ薬で副作用を起こしたことはないかなどの確認も行っています。。

 このような機能は、複数の病気を抱える高齢者にとって特に有効です。受診する診療科が多いほど大量の薬を処方されるため、重複投与や相互作用による健康被害を引き起こす恐れが高くなるからです。保険薬局の薬剤師に服用している薬の内容をチェックしてもらうことによって、薬による健康被害を未然に防げるメリットがあります。医薬分業の恩恵を十分に受けるためには、あちこちの薬局を利用せずに、「かかりつけ薬局」を1カ所に決めて薬歴を一本化することが大切です。

 また、薬を受け取る際には患者自身も自分の診療情報(病名や治療内容、経過や見通しなど)をできるだけ保険薬局の薬剤師に提供したいものです。というのも、薬剤師が直接入手できる患者の診療情報は処方せんに記載されている薬剤名に限られており、これだけの情報で的確なサポートを行うのは難しいからです。

医療機能情報提供システムのウェブサイトで目的に合う薬局を探そう

 では、たくさんの保険薬局の中から「かかりつけ薬局」をどのように決めればよいのでしょうか。医薬分業の観点からいえば、自分が服用している薬の安全管理を任せることになるわけですから、何でも気軽に話せて信頼できる薬剤師がいる薬局を選ぶことが肝要です。

東京都が手掛ける「東京都薬局機能情報提供システムt-薬局いんふぉ」と、埼玉県が手掛ける「埼玉県医療機能情報提供システム」

東京都が手掛ける「東京都薬局機能情報提供システムt-薬局いんふぉ」(上)と、埼玉県が手掛ける「埼玉県医療機能情報提供システム」(下)

 さらに一見すると同じように見える保険薬局ですが、糖尿病など生活習慣病の支援に取り組んでいたり、在宅ケアに力を入れていたりと、特徴のあるサービスを提供するところが増えてきました。このような保険薬局では管理栄養士による食事相談を受け付けたり、自宅まで薬剤を届けてくれるサービスを行ったりしています。地域の薬局の情報を集め、しっかり探せば、あなたのニーズを満たしてくれる保険薬局はあるはずです。

 保険薬局を探すときは、各都道府県が作成する医療機能情報提供システムのウェブサイトを利用するのもよいでしょう。保険薬局は2006年の第5次医療法改正で「医療提供施設」として位置付けられたので、医療機関の情報を公開する医療機能情報提供システムのウェブサイトでも保険薬局の基本情報を掲載するようになりました。これらのウェブサイトでは、地域や営業時間などを絞り込んで検索できるほか、業務内容、提供サービス、設備、外国語対応、聴覚障害者・視覚障害者・車椅子利用者への対応、クレジットカードによる支払い、公費負担への対応、地域連携体制など条件別に保険薬局を探すこともできます。

 これからは薬をただ受け取るだけでなく、さまざまな特徴や機能を備え、サービスを提供している保険薬局や、薬を正しく安全に使用するための手助けをしてくれる薬剤師を上手に選んで、賢く利用していきたいものです。



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渡辺千鶴(わたなべ・ちづる)

医療ライター

愛媛県生まれ。京都女子大学卒業。医療系出版社を経て、フリーランスに。医療・看護・介護分野を中心に編集・執筆に携わる。共著に『日本全国病院<実力度>ランキング』『知っておきたい病気の値段のカラクリ』(共に宝島社刊)『がん—命を託せる名医』(世界文化社刊)などがある。東京大学医療政策人材養成講座1期生。現在、総合女性誌『家庭画報』で「希望をつなぐ先端医療」を連載中。

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