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気になる医療・トクする情報(10)
保険薬局100%活用術②
薬局で受けられる医療サービスは無料ではありません

医療ライター
渡辺千鶴

( 2011/02/28 )

「門前薬局」で薬を受け取る方が調剤基本料は安い

  表1●診療報酬


表1●診療報酬

 医薬分業が少しずつ広がる中、全国で約60%の患者が保険薬局で処方薬を受け取る時代になりました。医薬分業制度は、医師と薬剤師の役割を明確に分けることによって、使用する薬剤の安全性や効き目を高めることを目的に導入されたものです。保険薬局の薬剤師は、その目的を果たすために、薬を調剤するだけでなく、さまざまな医療サービスを提供しています。



表2●領収証
表2●領収証

 もちろん、患者が受ける医療サービスは、国が定める「診療報酬」(保険診療で医療行為を行った際に支払われる報酬)に基づいた価格が設定されているので、薬局で受ける医療サービスも無料ではありません(表1)。

 では、実際に薬局ではどのような医療サービスが受けられ、どれくらいの医療費がかかっているのでしょうか。ここでは、実例を通して説明します。



  表3●調剤明細書


表3●調剤明細書

 Aさんは風邪をひいた後に左耳が痛くなり、耳鼻咽喉科を受診したところ、外耳炎と診断されました。医師から軟膏薬を処方され、診療所に隣接する保険薬局に処方せん(薬の名前や量が記載された用紙)を持参し、処方薬を受け取りました。

 領収証(表2)と調剤明細書(表3)を見ると、Aさんの薬にかかった医療費は軟膏薬代である「薬剤料」のほかに「調剤技術料」と「薬学管理料」が記載されています。調剤技術料とは、薬剤師が処方せんの指示に従って処方薬を調剤する作業に対して支払われる対価のことで、これには調剤基本料、調剤料、各種加算料があります。

 まず、Aさんにかかった調剤基本料は400円でした。調剤基本料は通常、処方せんの受付1回につき400円が算定されます。しかし、処方せんの受付回数が1カ月に4000回を超える保険薬局で、特定の医療機関からの処方せんによる調剤の割合が全体の70%を超える場合、算定できる調剤基本料は240円になります。つまり、患者側からみると、大病院の目の前に店を構える、いわゆる「門前薬局」と呼ばれる大型の保険薬局で薬を受け取るほうが、調剤基本料は安くなります。

休日や夜間に薬を受け取ると、追加料金が加算される

 一方、調剤料は処方される薬剤の種類(内服薬、頓服薬、外用薬、注射薬など)や日数によって異なります。外用薬、頓服薬、注射薬、内服薬の順で調剤料は高くなります。さらに調剤でいえば、近年は、多種類の薬剤が投与されている人、特に高齢者に対して、飲み忘れや飲み誤りを防止する目的などで、処方薬を1つの袋にまとめる「一包化」と呼ばれるサービスが普及してきました。しかし、これにも「一包化加算」が設定されており、内服薬の投与日数に応じて加算されます。

 また、医療機関で処方せんをもらったのに昼間は忙しくて薬局に立ち寄れず、夜間に開いている薬局で処方薬を受け取ったことはありませんか。調剤技術料には「夜間・休日等加算」が設定されているため、夜間(午後7時〜午前8時)や休日(薬局が表示する開局時間内)に薬を受け取ると、処方せん受付1回につき400円が加算されます。つまり、平日の日中に薬を受け取ったほうが医療費は安く済むわけです。

 なお、処方せんの有効期限は発行日を含めて4日です。この期限を過ぎると、もう一度医師に処方せんを発行してもらわなければならないので注意してください。

お薬手帳への記載にも「薬剤情報提供料」がかかる

 次に、薬学管理料について説明しましょう。薬学管理料とは、患者が安全に薬を使用できるように情報を提供したり、服薬指導を行ったりする医療サービスに対して支払われる対価のことです。Aさんには、代表的な薬学管理料である「薬剤服用歴管理指導料」と「薬剤情報提供料」が算定されていました。

 薬剤服用歴管理指導料は、かかりつけ薬局機能を明確にするために設定されたものです。薬剤師が個別に患者の薬歴簿を作成し、処方薬に対する重複投与や相互作用、薬物アレルギーなどをチェックし、処方薬の使用および保管に関する注意を説明したとき、処方せん受付1回につき300円が算定されます。

 また、お薬手帳に調剤日、処方薬の名称、用法・用量、相互作用などの薬剤情報を記載してもらった場合も、薬剤情報提供料が処方せん受け付け1回につき、月4回まで150円かかります。これらの情報を印字したシールを渡されることもありますが、患者がお薬手帳を持参していなかった場合は、薬剤情報提供料は算定できません。ルールがややこしいため、間違って請求されることもあるようです。調剤明細書の中身はしっかり確認するようにしましょう。

 処方薬を受け取る際に薬剤師の説明を聞くのは面倒だと思ったり、お薬手帳を渡されても読まずにしまい込んだり、捨ててしまったりする人が少なくありません。しかし、これらの医療サービスも有料であることを知り、上手に活用しましょう。

薬の安全性を高めるための費用が全体の4割を占める

 保険薬局に処方せんを持参し、処方薬を受け取る――。たったこれだけの行為にも、さまざまな医療サービスが付帯しています。そして、Aさんの事例をみると、薬にかかる医療費のうち、約4割は薬の安全性を高めるために支払っている費用(薬学管理料)で、決して調剤作業のみにお金を出しているのではないことがよく分かります。

 つまり、私たち患者は保険薬局から処方薬を安全に使用するための薬剤情報や医療サービスも購入しているといってよいでしょう。このような観点から保険薬局を賢く選ぶのであれば、薬を単に調剤し渡してくれるだけの薬局ではなく、患者の話をよく聞いて、その人が求める薬剤情報や医療サービスを的確に提供してくれる薬局を見つけたいものです。

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渡辺千鶴(わたなべ・ちづる)

医療ライター

愛媛県生まれ。京都女子大学卒業。医療系出版社を経て、フリーランスに。医療・看護・介護分野を中心に編集・執筆に携わる。共著に『日本全国病院<実力度>ランキング』『知っておきたい病気の値段のカラクリ』(共に宝島社刊)『がん—命を託せる名医』(世界文化社刊)などがある。東京大学医療政策人材養成講座1期生。現在、総合女性誌『家庭画報』で「希望をつなぐ先端医療」を連載中。

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