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気になる医療・トクする情報(16)
混合診療の仕組み①
保険外併用療養費制度を利用して
混合診療の負担を軽くしよう

医療ライター
渡辺千鶴

( 2011/12/21 )

医療サービスには健康保険が「適用されるもの」と「適用されないもの」がある

 環太平洋経済連携協定(TPP)の交渉参加を巡る議論の中で、にわかにクローズアップされたのが「混合診療」という医療制度です。一般には聞き慣れない言葉で、この仕組みについて知らない人も多いのではないでしょうか。

 国民皆保険制度を導入している日本では、健康保険で診療する範囲を限定し、それにかかる医療費は厚生労働大臣によって全国一律の価格が設定されています。一方、医療機関が提供する医療サービスの中には保険診療の範囲外のものがあり、その場合の医療費は各医療機関が自由に価格を設定することができます。

 つまり、私たちが受けられる医療サービスの中には健康保険が適用される「保険診療」と健康保険が適用されない「保険外診療(自由診療)」があるのです。この2つの医療サービスを併用することを「混合診療」といいます。

  図1●混合診療における医療費の自己負担


図1●混合診療における医療費の自己負担

 しかし、厚生労働省は「誰もが必要かつ適切な医療サービスを受けられる」という国民皆保険制度の理念のもと、混合診療を行うことを原則として禁止しています。そのため、混合診療を受けると、通常1〜3割の自己負担で済む保険診療の部分も保険外診療の扱いとなり、患者はかかった医療費の全額を支払わなければならず、負担が増大します(図1)。

 厚生労働省は混合診療を禁止する理由として、(1)保険診療のもと一定の自己負担額で必要な医療が提供されるにもかかわらず、患者に対して保険外の負担を求めることが一般化し、患者の負担が不当に拡大するおそれがある(2) 安全性と有効性が確認されていない医療が保険診療と併せ実施されてしまう=といった問題点を挙げています。また、専門家の中には医療財政の立て直しを目的に、保険診療の適用になっている医療サービスが除外されるなど、保険診療の縮小化につながるおそれがあることを懸念する人もいます。




原則禁止の混合診療でも、例外的に認められている医療サービス

 とはいえ、国民の生活水準が向上し、医療ニーズが多様化する中、健康保険で受けられる医療サービスだけでは満足できないという人たちも現れてきました。また、健康保険で使えるのは一般的に普及している医療技術や薬剤などに限られるため、国内で承認されていない新しい医療技術や新薬を利用できずに困っている難病患者もいます。

表1●「評価療養」と「選定療養」の項目


表1●「評価療養」と「選定療養」の項目”

 厚生労働省では、このような患者の要望を満たすため、先進医療および選定療養に対して保険診療と保険外診療の併用(混合診療)を例外的に認める「保険外併用療養費制度」を、2006年10月1日より開始しました。この制度は、「評価療養」と「選定療養」の2種類に分類されています(表1)。




  図2●保険外併用療養費制度のおける医療費の自己負担


図2●保険外併用療養費制度のおける医療費の自己負担

 評価療養とは、将来の保険導入のための評価を行うもので、先進医療や医薬品の臨床試験(治験)、保険適用前の医薬品や医療機器の使用など7種類の医療サービスを対象としています。選定療養とは、保険導入を前提としないもので、病院に入院した際の特別の療養環境(差額ベッド)の提供や予約診療、時間外診療など患者のニーズや選択の幅を広げることを目的に10種類の医療サービスが設定されています。

 保険外併用療養費制度を利用した場合、患者が医療機関の窓口で支払う自己負担金は保険診療の部分は1〜3割負担となり、保険外診療(評価療養または選定療養)の部分は全額負担となります。さらに、1〜3割の自己負担金には高額療養費制度が利用できるため、従来の混合診療に比べると、患者の負担は大幅に軽減されます(図2)。

 次回は、混合診療を巡る問題を取り上げ、それに対する国の動きや適応外薬の公知申請、TPPの話題などについてまとめます。掲載は、2012年2月を予定しています。






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渡辺千鶴(わたなべ・ちづる)

医療ライター

愛媛県生まれ。京都女子大学卒業。医療系出版社を経て、フリーランスに。医療・看護・介護分野を中心に編集・執筆に携わる。共著に『日本全国病院<実力度>ランキング』『知っておきたい病気の値段のカラクリ』(共に宝島社刊)『がん—命を託せる名医』(世界文化社刊)などがある。東京大学医療政策人材養成講座1期生。現在、総合女性誌『家庭画報』で「希望をつなぐ先端医療」を連載中。

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