Health & Money(コラム)

Health & Money タイトル画像

気になる医療・トクする情報(18)
診療報酬改定・介護報酬改定①
ダブル改定で医療・介護はどう変わる?

医療ライター
渡辺千鶴

( 2012/04/27 )

ダブル改定は「社会保障と税の一体改革」の第一歩

 今年は2年に1回のペースで見直される診療報酬改定の年に当たり、4月から医療費の価格が変わりました。同時に3年に1回のペースで見直される介護報酬(介護保険制度による介護サービスの価格)改定の年にも当たり、「ダブル改定」として大きな注目を集めました。

 今回のダブル改定は「『社会保障・税一体改革成案』で示した2025年のイメージを見据えつつ、あるべき医療・介護サービスの実現に向けた第一歩」と位置付けられたもので、今、議論が進められている「社会保障と税の一体改革」とも深くかかわっています。

25年は、団塊世代が75歳以上の後期高齢者となり「高齢社会のピーク」といわれている年です。今後の予測では05年から25年の20年間で75歳以上の人口が全国平均で2倍に増え、特に大都市近郊での著しい増加が見込まれています。これに伴い、起こってくるのが、年間死亡者数が急増する「多死社会」の到来です。

図1●社会保障・税一体改革素案が目指す医療・介護機能再編
(将来像)


図1●社会保障・税一体改革素案が目指す医療・介護機能再編(将来像)

 現在、高齢者を含めて病院で死亡する人は全体の約8割ですが、年間150万人以上の人が亡くなる25年頃になると当然、病院だけでは対応しきれなくなります。特に都市部では大勢の患者が押し寄せ、病院の治療機能がパンクすることが懸念されています。高齢者の「看取り場所」を確保することも社会の大きな課題となっているのです。

 そのため、「社会保障と税の一体改革」では25年に向けて医療・介護機能を再編する方向性を示しました(図1)。この素案では、患者のニーズに応じて病院や病床の役割と機能を分け、同時に医療機関間、医療と介護の連携を強化しながら、地域包括ケア体制(在宅医療・介護)を充実させることによって急増する看取りに対応できるよう策定されています。




医科分野約4700億円のうち在宅医療に約1500億円を配分

  図2●平成24年度診療報酬改定の全体像


図2●平成24年度診療報酬改定の全体像

 このような背景のもとに行われた今回の診療報酬は前回に引き続き、プラス改定となりました。医科分野に配分された診療報酬は約4700億円で、この金額も前回とほぼ同額です(図2)。そして、このうちの約1500億円が急性期から在宅、介護まで切れ目のない包括的なサービスを提供する目的のもと「医療と介護等との機能分化や円滑な連携、在宅医療の充実」に配分されました(図3)。この手厚い配分は、私たちが受ける医療や介護にどのような影響をもたらすのでしょうか。




図3●各分野における診療報酬の配分内容


図3●各分野における診療報酬の配分内容

 今回の改定では、緊急往診の再評価が行われています。実績がある医療機関に対しては、「往診料 緊急加算(6500円→8500円)*」や「在宅時医学総合管理料(4万2000円→5万円)*」、「在宅患者緊急入院診療加算(1万3000円→2万5000円)*」の報酬がそれぞれ引き上げられました。

 患者や家族が在宅医療を望んでも、平日の夜間や休日の緊急時でも必要なときに対応してくれる医師や看護師がいなければ安心して療養することはできません。国では06年の診療報酬改定時に「緊急時の連絡体制や24時間往診できる体制を確保し、在宅医療や看取りに対応する診療所(在宅療養支援診療所)」を新設し、整備を始めました。




 近年では、内科を中心として在宅医療へ本格的に取り組む診療所が少しずつ増えています。しかし、その数は全国で1万2000カ所程度しかなく、自宅に帰りたくても在宅医療の受け皿がなく、帰れずに困っている患者や家族が大勢います。今回の改定では、在宅医療の中でも医師や看護師の負担が大きい部分を特に評価することによって、在宅療養支援診療所の数が増えることが期待されています。

 さらに、医療ニーズの高い患者に対しては、訪問看護の充実が図られました。週4日以上の訪問看護を受けられる人の対象が広がり、外泊日、退院当日、退院直後の訪問看護にも報酬が出るようになりました。この改定により患者や家族は、必要に応じて訪問看護師のサポートを受けやすくなるでしょう。入院中の外泊や退院当日、退院直後についても訪問看護師のケアが受けられるのは安心です。

 また、緩和ケアを行っている有床診療所(入院ベッドのある診療所)に対して、今回の改定で「有床診療所緩和ケア診療加算1500円*(1日につき)」が新設されました。現在、がんやエイズのターミナル期の患者を対象とする緩和ケア病棟は病床数が足りず、入院待ちの患者も現れています。上述の緩和ケア診療加算は、そのための改善策の1つとして考えられました。これからは有床診療所でも緩和ケアを受けられる機会が増えてきます。さらに緩和ケア専門の医師・看護師と在宅医療を行っている医師・看護師とが共同で診療や訪問を行った場合にも報酬が認められるようになり、国では自宅における緩和ケアの充実を進めています。

 一方、看取りについても評価の見直しが行われました。実績がある医療機関に対しては、ターミナル期と看取り時の報酬を分け、それぞれ「ターミナルケア加算(6万円)*」と「看取り加算(3万円)*」として支払いが行われます。さらに、有床診療所に対しても看取り加算を新設し、病院以外の看取り場所を広げる対策が講じられています。

 *…1点×10円で計算


限られた資源と財源の中で、これからは「在宅医療」が大前提に

 以上のように、今回のダブル改定では在宅医療を推進する方向性がさらに強く打ち出されました。これは今後、限られた医療・介護資源と財源の中で超高齢社会を乗り切るためには、好むと好まざるにかかわらず「在宅医療が大前提」になることを意味しています。しかし、在宅医療は家族の介護力の問題も大きく、実際には、限られた人のみが受けられる医療です。

今、私たちが準備できる対策としては、いざというときに困らないよう在宅医療に熱心に取り組んでいる診療所を、今のうちから生活圏内で見つけておくことです。その際、福祉・保健・医療の総合情報サイト「WAM NET(ワムネット)」は、全国の在宅療養支援診療所の所在を検索できるので、活用してはいかがでしょうか。

そして在宅医療を受ける際には、家族の介護力を補うためにも社会制度や福祉サービスを十分に活用したいものです。入院先の病院の退院調整看護師や医療ソーシャルワーカーに相談し、介護保険の申請やサービスの利用を含め、入院中から早めに準備を進めておきましょう。国は急性期から在宅、介護まで切れ目のない包括的なサービスの提供を目指しており、今までより医療と介護の連携もスムーズになってくることが期待できます。

渡辺千鶴写真

渡辺千鶴(わたなべ・ちづる)

医療ライター

愛媛県生まれ。京都女子大学卒業。医療系出版社を経て、フリーランスに。医療・看護・介護分野を中心に編集・執筆に携わる。共著に『日本全国病院<実力度>ランキング』『知っておきたい病気の値段のカラクリ』(共に宝島社刊)『がん—命を託せる名医』(世界文化社刊)などがある。東京大学医療政策人材養成講座1期生。現在、総合女性誌『家庭画報』で「希望をつなぐ先端医療」を連載中。

新メディアスタート!

からだケアナビ

先進医療の技術内容や医療施設の検索は

先進医療ナビ

Health & Money

▲ PAGE TOP