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気になる医療・トクする情報(19)
診療報酬改定・介護報酬改定②
紹介状なしの大病院は負担増に

医療ライター
渡辺千鶴

( 2012/06/26 )

前回の改定に引き続き、病院勤務医の負担軽減が重点課題に

 この4月から新しく見直された診療報酬(医療保険サービスに対する公定価格)が実施されています。そのため、私たちを取り巻く医療環境にも少しずつ影響が出始めています。この先、医療はどのように変わっていくのでしょうか。

図1●重点課題 医療従事者の負担軽減にかかわる診療報酬の改定


図1●重点課題 医療従事者の負担軽減にかかわる診療報酬の改定


 今回の医科分野における診療報酬改定は、前回に引き続き、医療従事者、特に病院勤務医の負担軽減が重点課題に取り上げられ、救急医療、外来機能、チーム医療などの分野で見直しが行われました(図1)。このうち、私たち患者が医療を受ける際に大きな影響を及ぼす可能性が高いのが「特定機能病院等の初診・再診料」の改定です。




 特定機能病院とは、第2次医療法改正(1992年)によって制度化された医療機関の機能別区分の1つで、高度先進医療を提供する施設として位置付けられています。一般病院の設備に加え、集中治療室、無菌病室、安全管理室、医薬品情報管理室などを備えていること、病床数400床以上、10以上の診療科があることなどが条件となっています。2012年現在、全国80の大学病院および国立がん研究センター、国立循環器病研究センター、大阪府立成人病センター、がん研有明病院の合計84施設が特定機能病院として承認されています。

 この特定機能病院が制度化された背景には、病院と診療所(クリニック)の機能を明確に分ける(初期の治療は診療所やクリニックで行い、専門的な治療が必要になれば病院が行う)という目的がありました。そのため、特定機能病院では外来患者の紹介率(※1)などの基準が定められており、原則として紹介状がなければ受診することができません。

 ただし、「かかりたい医療機関にいつでも受診できる」という患者のフリーアクセス権を守るために、紹介状を持たない患者については初診料に別途「保険外併用療養費(選定療養)」を支払うことで診療を受けられる制度が設けられています。この費用は全額自己負担となり、それぞれの病院で自由に設定できるため、医療機関ごとに料金が異なります。この紹介状を巡るルールは、96年から200床以上の急性期病院にも適応されています。

※1…紹介率:地域の病院や診療所(クリニック)から大病院に紹介した患者の割合。
紹介率=(紹介患者数+救急患者数)÷初診患者数

紹介状がなければ大学病院は受診できない!?

  図2●特定機能病院などにおける初・再診療等の評価の見直し


図2●特定機能病院などにおける初・再診療等の評価の見直し

 さて、診療報酬改定に話題を戻しましょう。今回の「特定機能病院等の初診・再診料」の改定により、紹介状のない患者が紹介率や逆紹介率(※2)の低い特定機能病院や500床以上の地域医療支援病院(※3)を受診した場合、270点(2700円[※4])算定できる初診料が200点(2000円[※4])に減額されることになりました。また、急性期の治療が終わり、ほかの医療機関を紹介した後、患者が再度同じ病院を受診した場合、再診料が70点(700円[※4])から52点(520円[※4])に減額されます(図2)。




 ただし、患者に対して十分な情報提供を行い、患者の同意があった場合は、初診料や再診料で減額された金額分を、保険外併用療養費(選定療養)として患者から徴収することができる仕組みも同時に導入されました。つまり、紹介状を持たない患者が特定機能病院などの大病院で診療を受けたいと思ったとき、仕組みの上では従来と同じように(負担金額は以前よりも高くなりますが)、費用さえ支払えば、紹介状を持たなくても診療を受けることができるわけです。

 しかし、この新しい仕組みが導入されると、紹介状を持たない患者は特定機能病院や地域医療支援病院では受け入れられにくくなることが予想されます。この制度の対象となる多くの大病院では紹介状のない患者から減額分を徴収するよりも、紹介率や逆紹介率の規定をクリアし、紹介状のある患者のみを受け入れて正規の診療報酬を算定した方がよいと考えているからです。

 ちなみに、今回の改定の対象となるのは、前年度の紹介率が40%未満かつ逆紹介率が30%未満の特定機能病院や地域医療支援病院です。これからは、紹介状がないと大病院はますます受診できなくなるでしょう。

※2…逆紹介率:大病院から地域の病院や診療所・クリニックに紹介した患者の割合。
逆紹介率=逆紹介患者数÷初診患者数

※3…地域医療支援病院:第3次医療法改正(1997年)で制度化された医療機関の機能別区分の1つ。地域の病院や診療所の後方病院として高度医療を提供する。

※4…1点×10円で計算。

大病院を確実に受診するには「かかりつけ医」を持つ

 では、何かあったときに大病院を受診できるようにするにはどうすればよいでしょうか。それは以前から言われていることですが、日頃から健康の相談に乗ってくれる「かかりつけ医」(診療所やクリニックの医師)を持つことです。そうすれば、大病院を受診したいときも速やかに紹介状を書いてもらえるので、確実に受診することができます。

 かかりつけ医の探し方として、1つは近所の評判――いわゆるクチコミ情報が参考になります。医師の性格や態度など、診療所(クリニック)の看板や外観では分からない情報を聞けることがメリットです。

 地域住民とのつながりがなく、クチコミ情報を入手しにくい人はインターネットでも診療所やクリニックの検索ができます。また、住んでいる地域の保健所に問い合わせることも1つの方法です。電話をかけて希望する地域や診療科を伝えれば、近所で開業している診療所をいくつか紹介してもらえます。どの診療科を受診してよいのか分からないときは、保健師に症状を相談し、適切な診療科をアドバイスしてもらいましょう。ぜひ活用してみてください。

 日頃から健康の相談に乗ってもらう場合の診療科は「内科」が基本になります。しかし、日本では専門的な医学教育に力を入れてきたので、あらゆる病気に幅広く対応できる医師が少ないのが現状です。内科の場合は「総合内科専門医」の資格を持つ医師が総合的な内科の知識、技術、判断力を身につけており、かかりつけ医としての目安になります。12年4月現在、全国で1万4756人の総合内科専門医が活動しています。日本内科学会のホームページでは名簿が公開されているので、参考にしてください。

 また、内科、小児科、整形外科、精神科、皮膚科など複数の診療科に精通し、日常的によく起こる病気の90~95%に対応できる「家庭医療専門医」もかかりつけ医としてお勧めです。ただし、この資格は日本プライマリ・ケア連合学会が認定しているもので、全国にまだ120人ほどしかいません。同学会では育成に力を入れているので、これから徐々に増えてくることを期待しましょう。

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渡辺千鶴(わたなべ・ちづる)

医療ライター

愛媛県生まれ。京都女子大学卒業。医療系出版社を経て、フリーランスに。医療・看護・介護分野を中心に編集・執筆に携わる。共著に『日本全国病院<実力度>ランキング』『知っておきたい病気の値段のカラクリ』(共に宝島社刊)『がん—命を託せる名医』(世界文化社刊)などがある。東京大学医療政策人材養成講座1期生。現在、総合女性誌『家庭画報』で「希望をつなぐ先端医療」を連載中。

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