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診療報酬改定・介護報酬改定③
地域の介護はどう変わる?

医療ライター
渡辺千鶴

( 2012/08/27 )

「地域包括ケアシステム」の基盤整備を目的に新サービスを創設

図1●平成24年度介護報酬改定の基本的な考え方 図1●平成24年度介護報酬改定の基本的な考え方

 この4月、診療報酬とともに介護報酬の見直しも行われ、医療業界では6年に1度の「ダブル改定」として注目が集まりました。前回のおさらいになりますが、このダブル改定は、団塊の世代が75歳以上の後期高齢者になる2025年問題を見据えたもので、「社会保障と税の一体改革」が示した医療・介護サービス保障の強化と、社会保険制度のセーフティネット機能の強化に向けての第一歩として位置づけられています。

 そのため、介護報酬改定も25年に向けて「地域包括ケアシステム」の基盤整備を推進することに主眼を置いたものとなりました(図1、2)。地域包括ケアシステムとは、高齢者や介護を必要とする人々が住み慣れた地域で、可能な限り最後まで生活ができるように、日常生活圏内で医療、介護、予防、住まい、生活支援サービスを一体的に受けられる仕組みのことです。




  図2●平成24年度介護報酬改定のポイント

図2●平成24年度介護報酬改定のポイント



 75歳以上の後期高齢者の増加に伴い、中重度や医療ニーズの高い要介護者が増えることが予想されます。しかし、財政上の問題もあり、そうした人たちを低コストの在宅サービスで支えなければなりません。そのための受け皿として介護報酬改定を契機に、国では地域包括ケアシステムの構築に取り組み始めたというわけです。


図3●平成24年度介護報酬改定率 図3●平成24年度介護報酬改定率

 今回の介護報酬改定も09年度の改定に続き、1.2%のプラス改定となりました。在宅ケア重視の流れの中、1.0%が在宅サービスに、残り0.2%が施設サービスに配分されています(図3)。しかし、今回は介護職員の処遇改善に充てられる交付金が介護報酬本体に組み入れられたため、実質的にはマイナス0.8%の改定です。




 財源的に厳しい状況の中、国では介護保険法を改正し、地域包括ケアシステムへの足がかりとして、この4月から、「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」(定期巡回・随時対応サービス)と「複合サービス」という新しい在宅サービスを創設しました。

 定期巡回・随時対応サービスは24時間体制のもと、1日に複数回、看護師や介護スタッフが利用者宅を訪問できるというものです。これは増加している高齢者の単身世帯や2人世帯に対応するために創設されました。複合サービスとは、小規模多機能型居宅介護(デイサービスを中心に、必要に応じてショートステイや訪問介護を受けられるサービス)に訪問看護を組み合わせたもので、主に中重度者や医療ニーズの高い要介護者に対応できるように作られました。

 さらに近年は過剰な介護サービスのあり方が、高齢者の尊厳を守り、自立を支援する介護保険の本来の理念に反すると指摘されていました。この点に関して、今回の介護報酬改定では改善が図られ、「お世話型」サービスからの脱却がうたわれています。その具体策には、高齢者の自立をサポートするリハビリテーションや機能訓練サービスなどの充実が挙げられます。


医療ニーズの高い要介護者も在宅介護を選択せざるを得ない時代に

 自宅で介護を受ける中重度者や医療ニーズの高い要介護者、高齢者の単身世帯や2人世帯に手厚いサービスが行われる一方、必要となる財源を確保するため、軽度者向けのサービスの介護報酬が引き下げられました。例えば、介護付き有料老人ホームに入居する高齢者への居宅介護サービスの1つである「特定施設入居者生活介護」の報酬は、機能が似ている特別養護老人ホームの報酬に合わせて引き下げられ、軽度者ほど引き下げ幅が大きくなりました。

 また、高齢者の自立支援とサービスの効率化を図る目的のもと、訪問介護サービスの1つである生活援助サービスの時間が60分から45分に短縮されるなど、長時間サービスに対する時間配分をもう一度見直した上で報酬も引き下げられました。

 このような介護報酬改定を受け、高齢者が住む地域や高齢者の家族が直面する介護の問題は今後、どのように変わっていくのでしょうか。在宅介護は家族の介護力の問題も大きいため、中重度者や医療ニーズの高い要介護者を抱える家族はこれまで施設介護を希望することが多く、その受け皿になっていたのが老人保健施設でした。しかし、今回の改定により、在宅でのサービスが手厚くなり、老人保健施設も本来の役割(医療機関と在宅介護との中間施設)を取り戻すような介護報酬の見直しが行われています。

 今回の改定では、リハビリ部門を充実させて在宅復帰を強く促す施設に新しい基本報酬を設定し、高く評価しています。その一方で、その財源を確保するために従来の施設の基本報酬を引き下げました。これにより在宅復帰強化型に転換する老人保健施設が徐々に増えてくることが予想され、家族の介護力があるなしにかかわらず、中重度者や医療ニーズの高い要介護者も在宅介護を選択せざるを得なくなると思われます。

 また、軽度者向けのサービスの介護報酬が引き下げられたことによって、要介護度が低い人は介護サービスが十分に受けられなくなるかもしれません。これまでは費用さえ支払えば入居できた介護付き有料老人ホームも、これからは軽度者が入居しにくくなることが予想されます。介護事業者の中には、昨年10月に創設された「サービス付き高齢者向け住宅」を開設し、軽度者に入居してもらうことを検討し始めているところもあるようですが、こうした施設が各地に充足するまでには時間がかかります。

 さらに困るのは、以前に比べて介護保険を利用する高齢者が増えてきたので、どの自治体も介護保険の財源が逼迫(ひっぱく)し、介護の必要度を判定する「要介護認定」の審査が厳しくなっていることです。とくに認知症の人は1人で身の回りのことが十分にできなくても、身体的機能が低下していなければ、重度であると認められない傾向が強まっているようです。

評判のよいケアマネジャーを探して、介護サービスを使いこなす

 それでは、私たちがとるべき対策とは何でしょうか。前述したように、これからは在宅介護が大前提となるため、高齢者の家族は負担を少しでも減らせるように介護保険サービスを使いこなすことが肝心です。

 介護保険を利用するにはまず、住んでいる自治体の担当窓口に申請を行い、介護の必要度を判定する「要介護認定」を受ける必要があります。要介護認定は自治体ごとに設置されている介護認定審査会によって決められます。

 この手続きに伴い、自治体から派遣された訪問調査員が介護保険を申請した高齢者の自宅にやってきて認定調査を行いますが、このとき、高齢者の状態や介護にかかる手間を正しく認識してもらうことが重要になります。というのも、この要介護認定調査の結果が、介護認定審査会による要介護の判定の際、重要な参考資料となるからです。

 しかし、介護保険サービスを初めて利用する場合、利用者やその家族は要介護認定調査のポイントがよく分からず、戸惑ってしまうことが多いものです。特に高齢者や認知症がある人は見知らぬ人の前では普通に振る舞ったり、日常生活の状況を聞かれると「何でも自分でやっています」と答えてしまったりすることがよくあります。訪問調査員に現状が伝わらなければ、介護認定審査会では介護にかかる手間を正しく判定することができず、要介護度が低いものになってしまいます。

 このようなことを防ぐために、認定調査の際には必ず家族も同席し、本人ができることとできないことを、あらかじめ箇条書きにするなどして、訪問調査員に正しく認識してもらえるように準備しましょう。また、通常は介護認定審査会で要介護度が決定した段階でケアマネジャーを探し、介護保険サービスを使うためのケアプランを作成してもらいますが、訪問調査を受ける前にケアマネジャーを見つけて、困っていることを相談し、認定調査を受けるときのアドバイスをもらうことをお薦めします。

 介護保険制度では、利用者本人やその家族がケアマネジャーを自由に選べます。よりよいケアを受けられるかどうかはケアマネジャーの力量によるところも大きいので、「自宅に近い事業所のほうが何かと便利」といった単純な理由でケアマネジャーを選ぶのはやめましょう。とくに認知症がある場合は、認知症に対する知識があり、状態を的確に把握し、評価できるケアマネジャーに依頼することが大事です。

 ケアマネジャーのリストは、介護保険の申請窓口となる自治体の担当課で入手できます。できれば、お住まいの地域の「地域包括支援センター」に相談し、評判のよいケアマネジャーを紹介してもらうのがよいでしょう。地域包括支援センターの一覧は、各都道府県のホームページで検索することができます。

 地域包括支援センターでは、保健師や社会福祉士、主任ケアマネジャー、看護師などの専門職員を配置し、介護や福祉に関する相談を何でも受け付けています。介護保険に限らず、介護で困ったときはいつでも利用したいものです。

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渡辺千鶴(わたなべ・ちづる)

医療ライター

愛媛県生まれ。京都女子大学卒業。医療系出版社を経て、フリーランスに。医療・看護・介護分野を中心に編集・執筆に携わる。共著に『日本全国病院<実力度>ランキング』『知っておきたい病気の値段のカラクリ』(共に宝島社刊)『がん—命を託せる名医』(世界文化社刊)などがある。東京大学医療政策人材養成講座1期生。現在、総合女性誌『家庭画報』で「希望をつなぐ先端医療」を連載中。

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