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気になる医療・トクする情報(24)
市販薬のネット販売解禁で、仕組みはどう変わる?

医療ライター
渡辺千鶴

( 2014/02/25 )

薬事法が改正されて、この春から市販薬のネット販売が始まる

 2013年暮れの第185回臨時国会で薬事法の改正が成立し、この春から一般用医薬品――いわゆる市販薬のネット販売が解禁となる見通しです。

 そもそも、このネット販売による一般用医薬品の販売については、2009年6月に厚生労働省が一般用医薬品を副作用のリスクに基づき、第一類医薬品、第二類医薬品、第三類医薬品の3群に分け、薬剤師ら専門家による情報提供や対面販売を義務付けたこと(表1、2)に伴い、ネット販売による一般用医薬品の範囲をリスクの低い第三類医薬品に限定する省令を施行したことに始まります。

表1 リスクの程度に応じた一般用医薬品の分類
リスクの程度に応じた一般用医薬品の分類

表2  リスクの程度に応じた情報提供
 リスクの程度に応じた情報提供
 ところが、この措置に猛反発したネット販売事業者らは国を相手取り、医薬品のネット販売の権利とネット販売を禁止する省令の無効と取り消しを求めて提訴。2013年1月、最高裁判所は「一律に販売を禁止する厚生労働省の省令は憲法に違反して無効」との判決を下し、一般用医薬品のネット販売は事実上、解禁状態となりました。

 そこで、厚生労働省は新たなルールづくりを行うために検討会を設置し、今回の薬事法改正の成立となったのです。

医療用医薬品から転用された直後の市販薬はネット購入できないルールに

 新ルールにより約1万4000品目ある一般用医薬品のうち99.8%の医薬品はネット販売が可能になり、ほぼ全面的に解禁となります。ただし、「要指導医薬品」に指定されている劇薬5品目およびスイッチ直後品目(医療用医薬品から一般用医薬品に転用されて間もない医薬品)23品目は、従来通り薬剤師による対面販売になります。

 スイッチ直後品目は、医師の処方せんを必要とする医療用医薬品から一般用医薬品に転用されて間もないため、そのリスクが確定していません。そこで、要指導医薬品に指定し、薬剤師が対面販売を実施。原則3年をめどに安全性を評価し、その期間中に問題がなければネット販売が認められることになりました。なお、重篤な副作用の生じるおそれがある医療用医薬品は、従来通り薬剤師が対面で情報提供や服薬指導を行ったうえで販売されます(図1)。

図1 医薬品の分類と販売方法について
医薬品の分類と販売方法について

 また、販売方法に対しても新たに一定の制限が加わりました。ネット販売の場合も副作用のリスクが高い第一類医薬品は、従来通り薬剤師が対応しなければなりません。そのため、購入者はまず年齢、性別、病状、副作用歴、アレルギー歴、持病などの情報をネット販売事業者の薬剤師にメールで自己申告し、薬剤師はその情報に基づいたうえで購入希望の第一類医薬品の服用方法や服用時の注意点についてメールで情報提供を行います。これに対し、購入者が「提供された情報の内容を理解しました」という趣旨の返信を行った段階で商品が発送される仕組みになる模様です。

消費者はより一層、薬に対する自己責任が問われるようになる

 薬局や薬店がない過疎地域で暮らす人々が薬を欲しいときにいつでも購入できる利便性が高まることが期待される一方で、薬剤師をはじめ医療関係者の間では安全性の低下を心配する声が少なくありません。

 厚生労働省には一般用医薬品による副作用被害が年間約250件報告されており、その中には劇症肝炎など重篤な例や死亡例も含まれています。つまり、私たち消費者も一般用医薬品だからといって副作用のリスクが低いわけではないことを肝に銘じ、平素から薬の正しい知識について学んでおく必要があります。

 そして、ネット販売で一般用医薬品を購入する際には自分の体質や病状、薬の使用歴の情報を正しくネット販売事業者の薬剤師や登録販売者に伝え、薬に対する疑問や不安について納得するまで質問することが大切です。もっとも、これはネット販売にかぎったことではなく、薬局や薬店の店頭で薬を購入する際にも必ず実践したいことです。

 ネット販売の解禁とともに、消費者にはより一層、薬に対する自己責任が問われるようになるでしょう。ネット販売事業者が国の新ルールを守り、安全性の確保に十分に努める業者であるかどうかを見分ける目を養うことも重要です。

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渡辺千鶴(わたなべ・ちづる)

医療ライター

愛媛県生まれ。京都女子大学卒業。医療系出版社を経て、フリーランスに。医療・看護・介護分野を中心に編集・執筆に携わる。共著に『日本全国病院<実力度>ランキング』『知っておきたい病気の値段のカラクリ』(共に宝島社刊)『がん—命を託せる名医』(世界文化社刊)などがある。東京大学医療政策人材養成講座1期生。現在、総合女性誌『家庭画報』で「ファミリードクターに教わる症状からわかる病気百科」を連載中。

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