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気になる医療・トクする情報(25)
高額療養費制度の見直しで、
高所得者の自己負担が引き上げに

医療ライター
渡辺千鶴

( 2015/11/25 )

ポイント

  • 年齢や所得に応じて医療費の自己負担金を軽減してくれる制度に高額療養費制度があります。
  • 2015年1月1日の制度の改正により所得区分が3段階から5段階へと細分化されました。
  • 病気やケガなどで働けなくなり経済的に困ったときは、傷病手当金、失業保険、障害年金、生命保険など、いろいろな制度を利用することができます。医療ソーシャルワーカー、公的医療保険の窓口、役所、年金事務所、保険会社、金融機関、各都道府県の社会保険労務士会などに相談してみましょう。

年収1,160万円以上の人は自己負担金の上限額が約10万円アップ

 医療費の負担を軽減してくれる仕組みとして、ぜひ知っておきたいのが「高額療養費制度」です。これは、1か月の間に医療機関や薬局の窓口で支払った自己負担金が、ある一定の上限額を超えた場合、その超えた金額を払い戻してくれる制度です。自己負担金の上限額は年齢や所得に応じて定められていますが、70歳未満の人を対象に所得に応じた上限額の見直しが行われ、2015年1月1日に制度が改正されました。

 今回の制度改正のポイントは、所得区分を3段階から5段階にさらに細かく分け、低所得者の負担を引き下げる一方で、高所得者の負担を引き上げたことです。具体的に示すと、旧制度で上位所得者(健保:標準報酬月額53万円以上)の所得区分だった人は、新制度では年収約1,160万円以上(健保:標準報酬月額83万円以上 国保:年間所得901万円超)と年収約770万円~1,160万円(健保:標準報酬月額53万円以上83万円未満 国保:年間所得600万円超901万円以下)の2つの所得区分に分けられました(図表1)。

図表1:高額療養費制度
リスクの程度に応じた一般用医薬品の分類

 100万円の医療費がかかった場合を例に新旧制度の自己負担金の上限額を比較してみると、最も高い所得区分の人は約10万円、その次の所得区分の人も約1万7,000円の負担増となります。厚生労働省の試算によると負担増となる人は全国に約1330万人いるそうです。

100万円の医療費がかかったときの自己負担金の上限額の違い(上位所得者の場合)
新制度

①の所得区分
25万2,600円+(100万円-84万2,000円)×1%=25万4,180円

②の所得区分
16万7,400円+(100万円-55万8,000円)×1%=17万1,820円

旧制度

15万円+(100万円-50万円)×1%=15万5,000円

限度額適用認定証を申請し、医療機関の窓口の支払い負担を軽減する

 一方、高額療養費制度を利用する際に注意したいのは、70歳未満の人は原則として加入する医療保険者に支給申請が必要だということです。さらに申請してから2~3か月後に自己負担の上限額を超えた金額が払い戻されるため、医療機関の支払い窓口ではかかった医療費の3割をいったん支払わなければなりません。例えば、100万円の医療費がかかった場合は自己負担金が30万円必要になります。

 高額療養費制度の見直しによって低所得者の負担が引き下げられたとはいえ、高額な医療費を一時的に立て替えるのはたいへんです。そこで、利用したいのが「限度額適用認定証」です。「限度額適用認定証」を医療機関にあらかじめ提出しておけば、外来でも入院でもかかった医療費の窓口での支払いは自己負担金の上限額までになります。

 入院して手術や放射線治療などを受ける人はもちろんのこと、外来で薬物療法を受ける人も治療費が高額になることがあります。治療を始める前に担当医もしくは医療相談室の医療ソーシャルワーカーに自己負担金がどのくらいになるのかを確認し、高額になることが予測される場合は、限度額適用認定証の手続きを直ちに行いましょう。

 限度額適用認定証は、自分が加入している医療保険者に支給申請すると発行されます。入院日までに発行が間に合わないときも医療機関では対応してくれますが、月末を過ぎて提出するといったん自己負担金を全額支払い、還付手続きを取ることになります。費用が高額になる治療が決まったら早めに申請したいものです。

 なお、70歳以上75歳未満の場合は「高齢受給者証」を、75歳以上の場合は「後期高齢者医療被保険者証」を提示すれば、高額療養費制度や限度額適用認定証の手続きをしなくても自動的に窓口での支払いが自己負担金の上限額までになります。ただし、低所得者(住民税非課税世帯)の場合は「限度額適用認定・標準負担額減額認定証」の支給申請の手続きが必要です。

 詳細については、保険証に記載されている医療保険者(国民健康保険の場合は市区町村の担当窓口)、かかっている医療機関の医療ソーシャルワーカーなどにお尋ねください。

納得の治療を受けるためにも民間医療保険や貯蓄などで高額な医療費に備える

 医療費のうち、入院治療にかかる個室代や食事代、病衣代など、外来治療にかかる通院代など医療保険が適用されないものは高額療養費制度の対象になりません。その場合、全額自己負担になります(ただし、個室代、食事代、通院代などは医療費控除の対象となることがあります)。また、厚生労働大臣が「先進医療」として認めた治療をはじめ保険適用外の治療を受けた場合も、同様に高額療養費制度の対象にならず、かかった治療費は全額自己負担になります。

図表2:治療にかかる費用の内訳と高額療養費制度の対象
治療にかかる費用の内訳と高額療養費制度の対象

 このように医療費の中には、公的医療保険や高額療養費制度ではカバーできないものが多々あり、納得する治療を受けるためにも民間の医療保険や貯蓄などで備えておく必要があります。

 また、医療費だけでなく、病気やケガなどで働けなくなり経済的に困ったときは、傷病手当金、失業保険、障害年金、生命保険など、いろいろな制度を利用することができますので、かかっている医療機関の医療ソーシャルワーカーをはじめ、公的医療保険の窓口、役所、年金事務所、保険会社、金融機関、各都道府県の社会保険労務士会などに相談してみましょう。

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渡辺千鶴(わたなべ・ちづる)

医療ライター

愛媛県生まれ。京都女子大学卒業。医療系出版社を経て、フリーランスに。医療・看護・介護分野を中心に編集・執筆に携わる。共著に『日本全国<実力度>ランキング』『知っておきたい病気の値段のカラクリ』(共に宝島社刊)『がん――命を託せる名医』(世界文化社刊)などがある。東京大学医療政策人材養成講座1期生。現在、総合女性誌『家庭画報』で「がん医療を支える人々」を連載中。

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