先進医療の現場から(ルポ)

先進医療の現場から タイトル画像

千葉西総合病院(2)

救急を絶対に断らない病院が提供する
高度医療が多くの患者の生命を救う

( 2010/03/11 )

※この技術は、2012年から保険適用になりました。

「救急を絶対に断らない」「患者さんの治療に最善を尽くす」「常に最先端、最高度の医療をめざす」――。この3つの基本理念を掲げる医療法人社団木下会千葉西総合病院では、外科・内科すべての領域で急性疾患と集中治療に高度な医療を提供しています。その病院長として、先進医療の「エキシマレーザー冠動脈形成術」や「ロータブレーター」などを駆使した心臓、血管などのカテーテル治療に取り組み、世界中から患者を集めているのが三角和雄医師です。

年中無休24時間OPEN

 千葉西総合病院は、救急で運ばれる患者を拒まない病院として知られます。そこには三角院長の考えが深く浸透しており、「救急患者を断らない。年中無休24時間OPEN」をモットーに掲げ、毎日の朝礼でスタッフ全員がこれを唱和するほどです。

千葉西総合病院

千葉西総合病院

 「当院では満床だから、あるいは専門医がいないからという理由で、患者さんを拒むことを認めていません。命だけは平等です。われわれは患者さんが命を安心して預けられる病院でなければなりません。そのためにベッドは必ず確保できるようにしています。また、各科の専門医が24時間体制で常駐する体制を組んでいます」と三角院長。

 現在同院は408床、内科、循環器科、外科をはじめとする20科以上の診療科目を標榜する総合病院です。中でも循環器科は、三角院長のカテーテル治療を受けるために九州、関西方面など日本全国から患者が訪れるそうで、さらに海外からも治療を受けに来る人がいるとのこと。救急患者もヘリコプターなどを使って関東一円から訪れます。外来患者延べ人数が年間40万2984人(2009年)ですが、救急車受け入れ件数は約7000件にも上ります。

 また、患者が初診の予約をする必要がないのも、同院の大きな特徴です。ほかの医療施設からの紹介で外来に訪れる人もいますが、患者はいつでも、具合が悪いと感じたら来院することができるのです。中には、インターネットで三角院長の活躍を見つけて、メールで照会してくる患者もいます。もちろんその場合でも受診可能で、何より受診や、手術をするまでの時間を極力短くしようとしていることが特筆されるでしょう。

 一般に病院では、初診で検査を予約し、その結果を見てから手術などの治療を決定していきます。そのため、治療にかかるまでに何週間もかかることは珍しくありません。しかし、虚血性心疾患の場合緊急性を要することが多く、通院しているうちに病気が進行してしまうことも多々あります。一方、三角院長が「先ほど来た患者さんもCTを撮ってみたところ、これはおかしいということになったので、すぐに治療をすることになりました。カテーテル治療をすれば明日には退院できる見込みです」と説明するように、その日のうちに診断を完了し治療を行うケースが多いのには目を見張るものがあります。

 循環器科では1日の外来患者数が100人を超える日が続くことがよくあるそうで、年間の外来患者延べ人数は、4万4652人(09年)にも上ります。そのうち、年間約3500人にカテーテル治療を行っており、心臓に関するものは約2500件。カテーテルの治療数は関東では1位、全国でも2位を誇る病院なのです。

「高く目指せ」をスローガンに研修

三角和雄院長

三角和雄院長

 三角院長は東京医科歯科大学卒業、同大学第3内科勤務の後に米国のイリノイ大学医学部に留学。その後ニューヨーク医科大学、カリフォルニア大学などで臨床経験を重ね、1995年にはハワイ大学医学部内科臨床系助教授に就任。帰国後の03年からは、東京医科歯科大学臨床教授を務めています。また、千葉西総合病院院長には04年に就任しました。

 米国に留学しようと考えたのは、医学部最終学年時に米国の小児病棟で実習した際、「臨床で実力を養うには米国で学ぶのが一番だ」と思ったことがきっかけだったとのこと。そして、12年間にわたる米国での医療経験で、2,3年おきに医療施設を移りながら、次々に新しい技術を身に着けていきました。そのおかげで三角院長は、日本で経験する何百倍もの症例に取り組むことができ、そこから最先端の技術を習得したそうです。帰国に際し、こうして習得した技術を最大限に生かせる医療施設を探したところ、現在の職に巡り会ったというわけです。

 現在、三角院長は臨床の場数を踏むことを重視し、多くの研修医に自分の技術を徹底的に叩き込みます。年間1500を超えるカテーテル治療を行う病院長に、直接指導を受けることができるのは、同院ならではといってよいでしょう。三角院長は、米国空軍が新兵を募るときのスローガン「Aim High!」(高く目指せ)という言葉を掲げ、「常に上達していく自分を考えてほしい。楽をしたい人は当院には合いません」と断言します。厳しい研修ですが、その成果としてここで学んだ医師は、ほかの施設で研修した医師よりも早く、日本内科学会認定医、同専門医、日本心血管インターベンション治療学会(心血管のカテーテル治療の研究と発展を目的とする学会)認定医、指導医を取得しています。

 カテーテル治療について、三角院長は「曲がりくねったところをやるには、注意しなければならない。血の塊が多いときには、ゆっくりやらないといけない。こうしたちょっとしたコツが必要なので、誰でもすぐにできるわけではありません」と淡々と話します。実際、この微妙な感覚は何度も経験を重ねていかなければ身に着かないもので、後進の医師が習得するためには、ベテランの指導医のもと、多くの経験ができる施設での研修が不可欠です。日本有数のカテーテル治療が受けられるだけでなく、カテーテル治療の専門医の養成拠点という意味でも、同院には大いに期待が寄せられているのです。

選択肢はたくさんあったほうがよい

 三角院長が大切に考えていることが3つあります。1つは、患者さんに合った手法で手術をすることです。同院のカテーテル治療では、バルーン、ステント、ロータブレーター、エキシマレーザーなど、さまざまな手法で患者の手術に臨みます。これは、「同じ疾患で も、患者さんごとに病態が異なるため、できるだけその患者さんに合った手法で手術すべき」と三角院長が考えているからです。

 循環器科で診るのは心臓だけではありません。「心臓は体の循環をつかさどる臓器ですが、心臓というポンプから出る血液を巡らせる首、腎臓、足などを中心と した体中の血管も、ここでは治療しなくてはなりません。そのためには、それぞれの病態に合った手法を使わなくてはならないのです。さまざまな器具を使い、血管内が石みたいに硬いところやプラークがこびりついているところなど、どの病変でも対応できるようにします。ですからエキシマレーザーを多用すれば良いとは思っていません。『必要な場面では使う』という姿勢で治療に取り組みます」と述べます。エキシマレーザーを使うケースは、カテーテル治療全体の2〜3%ということですが、患者にとってエキシマレーザーがなかったら困難な治療が可能になるメリットは無視できません。こうして治療を受けた患者さんの99.9%は、症状を回復して自宅に戻っていきます。

 2つめは、治療した人が再び人間らしく普通に暮らせるようにすることです。 そのためには、心臓血管を広げる治療を行うだけでなく、心臓に関すること全般を診ることができる医師、全身の血管を診ることができる医師、さらに内科全般を診ることができる医師が必要とされるのです。

 「治療をして治ったけれども、歩けなくなって車いす生活が続いたり、脳梗塞になって後遺症が残ってしまったりしては、クオリティオブライフ(QOL=生活の質)の高い生活が送れると言えません。心臓の治療をするだけではなく、その人が快適に暮らしていけるような治療をしたい。そのために、いろいろな方法で試みたい。カテーテルはあくまでその方法の1つで、心臓やそのほかの臓器を診ること、内科全般を診ることが大切なのです」と三角院長は言います。

術前のレントゲン写真

術前のレントゲン写真
カテーテル治療前の冠動脈。円内中央部に見える動脈は動脈硬化の影響で、非常に細くなっており危険な状態だ

術後のレントゲン写真

術後のレントゲン写真
カテーテル治療後の冠動脈。 動脈の状態が元の健康な状態に戻り、血流が復活した様子が分かる

 3つめは、心臓血管外科との連携を図ることです。というのも、カテーテル治療がすべてに対して万能ではないからです。救急で来た患者にとって最善の治療はどのようなものなのか、できるだけ早く正確に診断をして、循環器科で診るのがよいのか、あるいは心臓血管外科で診るのがよいのかを決定し治療を開始する。そのためには診療科同士がチーム連携で診ることが重要となるのです。このように、多くの患者の生命、そしてその患者のクオリティオブライフ(QOL=生活の質)を守ることを、三角院長以下スタッフ全員が目指しています。

 ちなみに、千葉西総合病院はこれまで以上の医療ニーズに応えようと、2011年に心臓カテーテル8室、集中治療ベッド100床などの近代的なシステムを備える新しい病院(608床)として生まれ変わる予定です。

暮らしに役立つ健康情報を
調べたいときは

からだケアナビ

先進医療の技術内容や医療施設の検索は

先進医療ナビ

先進医療の現場から(ルポ)

キーワード

▲ PAGE TOP