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脳卒中の今

もし見つかったら生活習慣の改善を。
症状が出ない「無症候性脳梗塞」
 (2023/06/23)

 脳の血管が詰まって起こる脳梗塞では、手足の麻痺やしびれといった症状が出ることが多いですが、症状の出ない「無症候性脳梗塞」もあります。症状がない場合、緊急の治療が必要とされるわけではありませんが、将来的に症状のある脳梗塞や脳出血、認知症などにつながるおそれがあるため、見つかった時は生活習慣の改善に取り組む必要があります。無症候性脳梗塞の特徴や関連する病気、予防法などについて、東京都済生会中央病院副院長の星野晴彦先生に伺いました。

加齢とともに増加する無症状の脳梗塞

 脳梗塞は、脳の血管が詰まることによってその先に血液が運ばれなくなり、脳の組織が壊死する病気です。脳梗塞が生じると、多くの場合、脳梗塞の起こった部位に関係する手足の麻痺やしびれ、言語障害などの症状が出ますが、症状の出ない脳梗塞もあります。MRIやCTなどの画像検査で脳梗塞が見つかっても、それに関連する症状が出ておらず、また過去に脳梗塞や一過性脳虚血発作(脳梗塞の前触れのような病気。手足の麻痺やしびれなどの症状が一時的に生じるが自然に消える)の病歴がないものを「無症候性脳梗塞」と呼びます。

 無症候性脳梗塞の場合、脳の深部にある細い血管が詰まることが多く、壊死する範囲が小さいため症状が出ない場合があります。また、脳は部位によって、運動や感覚、言語など、担っている機能が異なります。ある程度大きな血管が詰まって脳梗塞を起こしたとしても、症状に直結する機能を担っている部位から外れることで症状が出ない場合があるのです。

 そのため、無症候性脳梗塞は健康な人が脳ドックを受けた際や、頭痛や外傷など脳梗塞とは関係ない理由で画像検査を受けた際に偶然見つかるケースがほとんどです。40代ごろから見つかる人が出始め、加齢とともに増えていきます。70代以上では約30%の人に無症候性脳梗塞が見つかるというデータもあり、高齢者世代では決して珍しくない病気です。

高血圧や糖尿病がリスクを高める

 無症候性脳梗塞の危険因子としては、加齢、高血圧、脂質異常症、糖尿病、喫煙などが挙げられ、中でも最も大きな危険因子が高血圧です。血圧が高い状態が続くと、血管に負担がかかるため動脈硬化が進み、血管をもろく狭くしてしまいます。その他の危険因子も、動脈硬化を進行させて血管を傷めます。

 また、不整脈の一種である「心房細動」も危険因子のひとつです。心房細動は心臓に血のかたまり(血栓)ができやすくなる病気で、心臓でできた血栓が血流に乗って脳に運ばれ、脳の血管を詰まらせる場合があります。

※参考記事:心臓の病気が原因で脳梗塞に?心原性脳塞栓症について知っておこう

 無症候性脳梗塞が見つかった場合は、既に動脈硬化が生じていると考えられます。放置してしまうと、動脈硬化が危険因子となる他の病気のリスクが高まるおそれもあります。例えば、無症候性脳梗塞のある人はない人と比べて、症状のある脳梗塞を発症する割合が4倍近くにもなるという研究データがあります。また、脳梗塞だけでなく、脳の血管が破れて脳出血を起こすリスクも高くなります。

 さらに、無症候性脳梗塞は認知症のリスクも高めるといわれています。小さな無症候性脳梗塞がいくつも生じると、認知機能が低下し、血管性認知症の発症につながることがあります。また、アルツハイマー病にもなりやすくなることが分かっています。

生活習慣の改善が何よりも大切

 症状のある脳梗塞の場合は、命に関わる可能性があるため、速やかに治療を受ける必要がありますが、無症候性脳梗塞は緊急治療が必要なものではありません。しかし、危険因子をできるだけ取り除き、症状のある脳梗塞など他の病気を発症しないようにすることが大切です。血管の詰まり具合や全身の状態などを調べたうえで、薬を使った治療を行う場合もありますが、第一に行うべきなのは、生活習慣の改善や、危険因子となる病気の治療を行って、血管を傷めるような要因をコントロールすることです。

まず、たばこは唯一、完全に取り除ける危険因子であるため、禁煙が強く勧められます。また、最大の危険因子である高血圧のコントロールはとても大切です。自宅での血圧測定を習慣化し、減塩や運動など生活習慣の改善を心がけましょう。既に高血圧で治療を受けている場合は、治療をきちんと続け、脂質異常症や糖尿病がある場合にも、健康的な食生活や運動習慣を心がけるとともに必要に応じて治療を受けるようにします。心房細動がある場合も治療をしましょう。

東京都済生会中央病院副院長の星野晴彦先生

東京都済生会中央病院副院長の星野晴彦先生


無症候性脳梗塞の危険因子 予防と治療

 上記の内容は、無症候性脳梗塞を予防するためにもとても大切です。特に、健康診断で血圧やコレステロール、血糖値などの異常を指摘されている人は生活習慣を見直しておきたいものです。「病気にかかる前に予防することが何よりの治療」と言えるでしょう。



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