先進医療の現場から(ルポ)

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横浜市立大学附属
市民総合医療センター(1)

マイクロ波で子宮内膜を凝固・壊死させ
過多月経を治療

( 2011/01/31 )

 子宮筋腫などによる過多月経の治療は、まずは薬物療法が行われ、その効果がなくなった段階で、子宮を摘出する手術が選択肢となるのが一般的です。しかし近年、薬物療法が効かなくなった患者に対して、手術ではない新たな治療が選択肢として浮かび上がってきました。先進医療として認められているマイクロ波子宮内膜アブレーション(Microwave Endometrial Ablation:以下MEA)です。横浜市立大学附属市民総合医療センターにおけるMEAの現状を2回にわたりレポートします。

 「MEAとは、マイクロ波(2450MHz)を発生させる細い金属の棒を子宮内に挿入し、子宮内膜を凝固・壊死させる治療法です」と説明するのは、横浜市立大学附属市民総合医療センター婦人科の吉田浩部長。マイクロ波を当てることで、子宮内膜の基底層に熱を発生させ、その熱で基底層の細胞を凝固・壊死させます。マイクロ波は基本的に電子レンジと同じ原理で分子を超高速に振動させ、その振動により熱を発生させる作用があります。この熱で、組織を凝固・壊死させるのがMEAです。

「サウンディングアプリケーター」により子宮筋腫を凝固させる様子(出典:医誠会病院レディスセンター・金岡靖センター長監修、アルフレッサファーマ株式会社「マイクロ波による過多月経の治療法」)

「サウンディングアプリケーター」により子宮筋腫を凝固させる様子(出典:医誠会病院レディスセンター・金岡靖センター長監修、アルフレッサファーマ株式会社「マイクロ波による過多月経の治療法」)

 同センターにおけるMEAは、吉田部長の前任者である石川雅彦前部長(現大和市立病院[神奈川県大和市]産婦人科)が、約5年前に導入した治療法です。当初、自由診療として実施されていましたが、2009年に先進医療として認められ、これまでに同センターでは、50人弱の患者がMEAによる過多月経の治療を受けています。ちなみに、10年12月現在、MEAを実施している医療機関は、同センターを含めて全国で8施設あります。

 MEAは、全身麻酔を必要とする治療ではありますが、治療時間は40〜50分程度で、治療手技も単純なものと吉田部長は説明します。同センターでは2泊3日の入院で治療を受けることができるそうです。

 同センターにおけるMEAの治療対象は、子宮腺筋症、子宮筋腫、人工透析治療などの影響による過多月経です。MEA治療後多くの患者で月経量の減少が確認されました。また、貧血などの生活上の問題が改善した患者は9割以上にのぼるそうです。

 「MEAを希望する患者さんの多くは、薬物療法が効かないものの、閉経までの数年を手術以外の方法で過多月経に悩まされずに過ごしたいという希望を持っています」と吉田部長。閉経すれば過多月経は自然治癒するため、自然治癒する疾患に対して手術を受けることに抵抗感を持つ患者は多いようです。

 ただし吉田部長は、「妊娠を希望する方は治療の対象とはなりません」と断ります。これは、MEA治療後は内膣を凝固してしまうため、妊娠しずらくなるためです。さらに、「筋腫などの影響により、子宮の内部が極端にデコボコしているような患者さんも、子宮内膜全体に装置が届かない可能性があるため、治療対象としていないのです」と付け加えました。

 加えて吉田部長は、「MEAの手技そのものは簡単で患者さんへの負担も少ない治療法ですが、治療により子宮内膜が予想以上に癒着するリスクがあります」とも指摘します。そして、子宮内膜が癒着した場合には、子宮体がんの検診に支障をきたす可能性があると話します。子宮体がんは、子宮内部に発生するがんであり、検診では子宮内部に器具を挿入し、内部の細胞を採取しますが、子宮内膜が癒着した場合、子宮内部に細胞採取用の器具を挿入し難くなる可能性があるためです。

 

子宮筋腫にはほかの保存的治療法も

 実は、子宮筋腫に関しては、MEA以外にも、子宮を温存する保存的治療法があります。子宮動脈塞栓術(Uterine Artery Embolization:以下UAE)と、集束超音波手術(Focused Ultrasound Surgery:以下FUS)です。

MEAの治療機器「マイクロターゼAZM-550」(写真提供:アルフレッサファーマ株式会社)

MEAの治療機器「サウンディングアプリケーター」(写真提供:アルフレッサファーマ株式会社)

MEAの治療機器「マイクロターゼAZM-550」(写真上)、MEAの治療機器「サウンディングアプリケーター」(写真下:提供はともに、アルフレッサファーマ株式会社)。この機器を使った治療が11年1月現在、横浜市立大学附属市民総合医療センターのほか、大阪市立大学医学部附属病院、NTT東日本札幌病院、大阪医科大学附属病院、島根大学医学部附属病院、医療法人医誠会医誠会病院(大阪府)、市立四日市病院 、市立札幌病院、市立伊東市民病院で先進医療に認定されている

 UAEとは、X線で透視しながらカテーテルを子宮動脈に挿入し、子宮筋腫に栄養を運ぶ動脈を閉塞させる治療法です。いわば筋腫の兵糧攻めといえます。ただし、治療後に発熱が続くなどの有害事象が少なくなく、効果を疑問視する専門家もいます。

 FUSは、体外から超音波を集中照射して、筋腫を加熱・壊死させる治療法です。体外から超音波を照射するため、低侵襲であることが最大の特徴で、麻酔も必要ありません。ただし、筋腫の大きさがある程度以上の場合や、筋腫の数が多い場合には治療の対象外となっています。加えて、FUS用の装置は約5億円と高額なため、装置を導入している医療機関は限られているのが現状です。

 治療費は、UAE、FUSともに現在、自由診療で行われており、施設により多少異なりますが、医療費はどちらも50万〜60万円程度と高額です。自由診療なので、全額患者負担になります。一方、横浜市立大学附属市民総合医療センターにおけるMEAの患者負担額は12万8900円。先進医療の対象となっていることもあり、MEAの患者負担額は、UAEやFUSに比べて低額というメリットがあります。

 次回は、同センターにおける、MEAによる治療の実際を紹介します。


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